第四百四十四話
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第四百四十四話 素麺は何故か
小田切君は何故ライゾウとタロが素麺を好きなのかを尋ねた、その朝食のお茶漬けを食べつつだ。
「何でこの二匹素麺好きなんですか?」
「実は以前わしが夏に三輪素麺を茹でようとしたらな」
「その時にですか」
「うむ、この二匹がたまたま床に落とした素麺の匂いを嗅いでな」
そうしてというのだ。
「気に入ったのか齧ってな」
「そしてですか」
「そこから気に入ってじゃ」
博士もお茶漬けを食いつつ言う、梅茶漬けである。
「食っておるのじゃ」
「普通の理由ですね」
「わしがまた何かしたと思ったか」
「いえ、別に」
小田切君は自分の野沢菜茶漬けを食べつつ答えた。
「そうしたことは特に」
「考えてなかったか」
「はい、ただ何かと思って」
「それで聞いただけか」
「他意はないです」
そこは絶対にというのだ。
「本当に」
「そうであったか、まあわしもこの二匹の寿命をかなり伸ばして人間の言葉も喋られる様にしたが」
しかしというのだ。
「別に味覚まではいじっておらん」
「そうなんですね」
「そうじゃ、それで夏になったらな」
「お素麺ですね」
「うむ、やはり三輪素麺がよいぞ」
「あの素麺は確かに美味しいですね」
「さっと茹でて冷やしてな」
そうしてというのだ。
「冷たいお水や氷でな」
「おつゆに漬けてですね」
「もっと言えばおつゆには梅も入れる」
「生姜は」
「勿論それも忘れずにな」
「それでお蕎麦みたいにつるつるですね」
「夏の楽しみの一つじゃ」
博士は小田切君に笑って話した。
「二匹にとってもな」
「じゃあ暑くなったら作りますか」
「わしもそう考えておる」
博士自身もというのだ。
「何回か作るぞ」
「僕が作りますが」
「助手としてか」
「ええ、まあ」
「いやいや、素麺を上手く茹でるのは難しい」
博士は笑って小田切君に話した、よく飲んだ翌朝のお茶漬けの美味さを堪能しつつ夏の味の話をするのだった。
第四百四十四話 完
2017・5・5
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