花園の章
I
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は食事にしよう。」
そう言うやミヒャエルは、直ぐ様二人をテーブルへと連れて行き、ルースに二人前の追加オーダーをしたのであった。
暫くは三人で食事を楽しみながら談笑し、肝心のヘルベルトについての話は一切口にしなかった。既に大勢の客が入っていたためである。
しかし、時にはこういう食事も悪いものではないと、その場は三人でその雰囲気を堪能したのであった。
食事の後、三人はルースへ挨拶すると、そのまま二階の客室へと移動した。昨日同様、ミヒャエルが借りている東側の部屋である。
「さて…これから先の話だが、このままの状態で王都へ入るのは、些か準備不足だな。先ずは、散らばっている団員達を呼び戻さなくては…。」
「ミヒャエル様。それに関しては御心配には及びません。召集伝達のルートは確保してありますので、直ぐにでも伝えられるようになっております。」
ミヒャエルの言葉に、直ぐ様シオンが返答した。
「そうか。それで、どこへ集まるようになっているんだ?」
「ラタンになっております。」
「あの子爵が治める街か…。馬車で三日程だな…。」
ミヒャエルはそう言うや、暫く考え込んでしまった。最近収集した情報から察しても、事は急を要する事態に陥っていたのである。出来れば早々に白薔薇騎士団員を召集し、ヘルベルトの行動を阻止せねばならず、かといってこちらが急激に動けば、ヘルベルトに足下を掬われ兼ねないのである。
それに、この街の人々には大変世話になったこともあり、別れも告げられずに出立するのには、些かの抵抗があったことも否めぬ事実であった。特に、数ヵ月働かせてくれたハッシュへは、可能であれば別れを告げて行きたかったが、事は国に関わること。それも王家が滅亡するかも知れない大事である。
-マーガレット…君ならどうしただろうか?別れを告げず、密やかに出る方が良いのは分かっているが、やはり…-
月影の中、ミヒャエルは胸中でそっと呟いた。すると、それに答えるかのように、彼の耳元へ誰かが囁いた。
-生きていれば、また必ず出会えるでしょ?その時に謝ったりすれば良いのよ。迷わないで…私の王子様…-
「マーガレット…?」
ミヒャエルはふと振り向き、辺りを見回した。
だがそこには、不思議そうに彼を見詰める二人の騎士の他には誰も居なかった。
それは月影が聞かせた幻聴だったのかも知れない。もう聞くことの出来ない愛した人の声…。聞こえる筈もなく、ましてや答えてくれる筈もないのである…。
そう思い直し、ミヒャエルは軽く苦笑した。そして、それらを振り切る様に二人の騎士へと告げたのであった。
「明日の夜明け前、この宿を出よう。」
その言葉に、ヘルマンとシオンは膝をつき、ミヒャエルへと頭を垂れて「畏まりました。」と返したのであった。
その日
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