花園の章
I
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あろう。
「ミック!今日はここらで終わりにしようや。」
「了解しました!しかし親方、宿舎の補修はどうすんですか?まだ夕刻には早いですけど…。」
「これから行っても、夕刻までにゃ終らんよ。お偉いさんだって、疲れて帰ったら大工が居たなんてぇのは嫌だろうし、明日の朝一にでも手を入れるさ。」
親方と呼ばれた男は笑いながら、前に来たミヒャエルへと言った。
この男の名はハッシュと言い、この街の腕利きの大工である。ミヒャエルはそんなハッシュに、苦笑いしながら答えて言った。
「それじゃ、明朝は宿舎へ行けばいいですかね?」
「おう、そうしてくれ。お前が入ってから仕事がはかどって助かる。何せこの暑さで、体を壊して来れねぇ奴も多くてなぁ。ま、宜しく頼まぁ!」
「はい、親方。」
ミヒャエルはそう言うと、ハッシュに別れの挨拶をしてからその場を後にしたのであった。
今ミヒャエルが居た場所は、新たに教会を建てている現場であった。
この時代、教会と言えば時の王リグレットを奉ずるリーテ教の建築を指したが、ここで建設されたのは聖マルス教会であり、聖マルスはヴァイス教の守護聖人の一人である。ヴァイス教は聖エフィーリアを奉ずる宗派であり、この時代には珍しいと言える。
ハッシュはその聖マルス教会と同時に、先程話していた街の宿舎や他数件の民家の建築も手掛けていた。
ハッシュは街一番の大工職人であり、年がら年中お呼びの掛かる人物で、要は彼の仕事場は万年人手不足であったのである。この街に入ってそれを聞き付けたミヒャエルは、直ぐ様ハッシュの元へと仕事を世話してほしいと頼みに行ったと言うわけである。
それ以来数ヵ月の間、ミヒャエルはハッシュの下で働いていたのだが、そこはまた、この街以外から出稼ぎに来ている労働者も多いため、遠くの街や村、そして王都の情報も多く入手することが出来たのである。
まさか国の第三王子が、このような建設現場で働いていようとは…一体誰に想像出来ようものであろうか。その点に関しても、ミヒャエルには好都合と言えたのである。
しかしこの時以降、ハッシュがミヒャエルの姿を見ることは無かったのであった。
その日の夕刻。
ミヒャエルは宿へと戻り、そこでささやかな夕食を楽しんでいた。
その最中、ルースが客人が訪れたことを知らせにミヒャエルの元へとやって来たため、直ぐ様席を立って食堂を出た。するとそこには昨日再会したヘルマンと、そしてもう一人、懐かしい人物が共にあった。
「シオン!来てくれたか。」
それはこの街に来ていたもう一人の騎士、シオン・バイシャルであった。
「お久しぶりです、ミヒャエル様。方々動いていたためにこのような時刻となりまして、大変申し訳御座いません。」
「気にするな。ヘルマンも疲れているだろうし、二人とも、先ず
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