花園の章
I
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ったことや、宿泊していた宿へ自分が居たために火が放たれたことも。
そうして話は、いよいよマーガレットの死の瞬間へと至ったのであった。
「その時…狙われた俺を庇い、マーガレットは自分の身を盾にして、ヘルベルトの剣から守ってくれたのだ。ヘルベルトはそんなマーガレットに罵声を浴びせかけ、剣を力任せに俺へと突き立てようとした。それがなかったら…マーガレットは死なずに済んだかも知れなかった…。」
全てを聞いたヘルマンは、何も言葉にすることが出来なかった。
マーガレットは端から見たら、ミヒャエルに気はないように見えた。だが、この二人と旅路を共にしたヘルマンから見れば、二人は幸福な恋人同士に見えていたのである。
マーガレットは、自分の気持ちを素直に表面へ出すことが下手な性格であった。それ故、自らの心をミヒャエルへと直接伝えることは無かった。
彼女自身、身分を表に出すような人物では無かったが、やはり王子が相手というのは自身には相応しくないのではと、心のどこかで感じ続けていたのかも知れない。
だが、時折垣間見せるミヒャエルへの屈託の無い笑みはとても幸せそうで、それを思い出すと、ヘルマンは遣り切れない思いに駆られるのであった。
「もう…誰にも死んでほしくはないな…。」
その言葉は深く、とても重いものであった。
「ミヒャエル様…。」
ヘルマンは彼の言葉に、ただ名を呼ぶことしか出来なかった。
ミヒャエルは静かに月を仰ぎ見ながら、心でそっと考えていた。母が違うとは言えど兄弟が互いにいがみ合い、こうして殺し合わねばならないとは…。これが王家と言うもの、人の上に立つと言うものなのならば、いっそのこと滅びた方が良いのではないか…と。
だが、ただ無くなれば良いというのでは、それはあまりにも無責任であると言うことも理解はしていた。故にミヒャエルは、この先の様々な艱難にも立ち向かう覚悟はあった。
「俺は甘いな。なぁ、ヘルマン。」
「確かに…。ミヒャエル様は優し過ぎるのだと思います。しかしその心は、その優しさ故に強いのだとも思っております。」
「そうだろうか…?ま、この騒ぎが収まれば、この国も少しはマシになるかもな…。それには何としても、首謀者であるヘルベルト兄上を止めなくてはならない。ヘルマン、これから先も力を貸してくれ。」
「無論です。私はミヒャエル様以外、お仕えする気は御座いませんので。」
ヘルマンはそうキッパリと言い切ると、ミヒャエルへと家臣の礼を取ったのであった。
翌日、ミヒャエルはいつもの様に街中の建設現場で働いていた。
青空から太陽の日差しが容赦無く降り注ぎ、大地はうだるような暑さに陽炎が揺らいで見えていた。
だが、そのような暑さにも関わらず、ミヒャエルは平然と誰よりも仕事をこなしていたのであった。長旅の成果で
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