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SNOW ROSE
花園の章
I
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るのかを知り、わざとそれに乗ったのではないか…と言うことである。
 だとすれば、国王たるシュネーベルガW世は、現在かなり危険な状態におかれていると言うことになる。今この瞬間でさえ、ベルンハルトに命を奪われ兼ねないと言えるのだ。
「ではヘルマン。今、他の団員達は何処へ?」
「団長は、恐らくルーンの街へ行っている筈です。何かあった場合、ルーンでしたら王都との連絡が可能ですし、王都内に留まっているよりは伝令の受け渡しも容易に出来ますので。他の団員達はハランやキシュなどに散らばっております。」
「そうか…。で、この街にはお前一人なのか?」
「いいえ。シオンも共に来ております。今は別行動をしておりますが。」
「シオン・バイシャルか…。では、明日にでも合流出来るよう手配をしておいてほしい。」
「畏まりました。」
 二人はそこで話を切った。
 室内はランプのか細い明かりに照らされていたが、ミヒャエルがふと見ると、窓から月の光が室内へと落ちていた。
 ミヒャエルは窓辺に寄って空を仰ぐと、そこには無数の星々を統べて大きな月が浮かんでおり、その輝きは、まるで愛しい者を包み込むかのような優しさに溢れ、否応なしに愛した人の姿を胸に浮かび上がらせた。
「それでも…愛していた…。」
 月明かりの中、ミヒャエルはポツリと呟いた。その呟きに、ヘルマンはビクリとした。ここへ向かう途中、あの金木犀の薫りの中、ミヒャエルは「全て話す」と言っていたからである。
 ヘルマンとて、それは知りたいと思っていた。
 だがしかし、それを聞いてしまえば二度と、彼女…マーガレットの名さえ口に出来なくなってしまうのではと。それ程に、マーガレットのことを聞いた時のミヒャエルの横顔は苦痛に歪んでいるように見えたのであった。
 ヘルマンはマーガレットのことを好いていた。それは恋愛感情とは違い、一種の憧憬にも似ていた。
 ヘルマンはマーガレットと同じく、歴史には大変興味を持っており、彼女の熱意と博学ぶりには敬意の念さえ抱いていたのである。強いて言えば、同じ学問を愛する「同胞」としての愛とも言うべきか。
 だが、これを聞かねば前へと進めぬことも事実だと考え、ヘルマンは「お話し頂けますか?」と、ミヒャエルへ静かに言ったのであった。
「あれは…フォルスタでのことだ…。」
 ヘルマンの言葉に、ミヒャエルは彼と視線を合わせることなく、空へ浮かぶ月を見詰めながら口を開いた。
 それは恰も誰かが書いた小説でも読むかのような口調で、そこに感情の起伏は感じられなかった。
 しかし、ヘルマンには分かっていた。ミヒャエルが今、自身の感情を必死で圧し殺しているのだということを。
 ミヒャエルはヘルマンにフォルスタで出会った夫妻のことや、この夫妻と連れ立って向かった廃墟のことなどを語った。その廃墟で起こ
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