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SNOW ROSE
花園の章
I
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と思い出したように言った。
「マーガレット様がお好きな花ですね。」
 その言葉に、ミヒャエルは体を強張らせて立ち止まってしまった。
 この時、ヘルマンは未だマーガレットが殺されたことを知らないのである。それどころか、父である侯爵にさえ娘の死は知らされていなかったのであった。
 それは予想の範囲内ではあったミヒャエルではあるが、愛した人の名を聞かされるとやはり胸が痛み、心の傷は簡単に癒せぬものと実感させられたのであった。
「ヘルマン。マーガレットは死んだんだ…。フォルスタで俺を庇ってな…。」
「……!」
 ミヒャエルの沈痛な声に、ヘルマンは返す言葉が見つからなかった。
 以前、ヘルマンも暫くの間ミヒャエルと共にマーガレットの旅に同行していたことがあった。それは、王都からミヒャエルへと旅費を渡しに行った時である。
 その時、国王にミヒャエルの様子を伝えるべく、約二ヶ月程二人の旅路に加わっていたのだ。それ故、マーガレットの人となりをよく知っており、ミヒャエルの言葉に動揺を隠せなかったのであった。
「ヘルマン。このことも含め、後で全て話す。」
「はい…。」
 それ切り二人は話すことなく、そのまま宿へと足を早めたのであった。
 暫くして宿へ着くと、そこには宿の主であるルースが仕事をしていた。奥にある食堂兼居酒屋からは、何人もの談笑が洩れ聞こえていた。
「お帰りなさい。湯は持って行かせますかい?」
「いや、いい。少し立て込んだ話をするから、暫く誰も来させないでほしいんだ。」
「分かりました。」
 ミヒャエルはルースにそう言うと、ヘルマンを伴って二階の部屋へと向かったのであった。
 ミヒャエルが借りている部屋は、二階の一番端にある。そう広い部屋ではないが、男一人寝泊まりするには充分な広さと言えた。
「そこの椅子にでも掛けてくれ。」
 部屋に入るやそう言われたヘルマンは、近くにあった椅子へと腰を掛けた。それを確認したミヒャエルは、自身も椅子に腰掛けてヘルマンへと向き合った。
 そうして後、ミヒャエルはヘルマンへと質問を投げ掛けた。
「何故お前が王都の外で動いているのだ?俺はお前達に言った筈だ。王に予期せぬことがあった場合、王を護れとな。」
 ミヒャエルの口調は少々強くなっていた。
 それもその筈である。現在、その護れと言ったその国王が病に倒れて臥せっているのだから、口調が強くなることは当然と言えよう。
 だが待たずして、その問いに答えるべくヘルマンが口を開いた。
「ミヒャエル様。これは陛下の御命令なのです。我ら白薔薇騎士団は王の命により、早々にミヒャエル様を見付け出し、そして全力で護れとの御命令にて動いております。」
「父の…命令だと…?」
 この時、ミヒャエルの脳裏には嫌な考えが過った。王はベルンハルトが何を企んでい
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