暁 〜小説投稿サイト〜
SNOW ROSE
花園の章
I
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めていた。ここ数日、王都では二つの騎士団の動きが慌ただしいようだとの噂を聞き、何かしらの進展があるかも知れぬと期待していた。
 だが最も気掛かりなことが全く伝わってこないことに、ミヒャエルは眉を潜めていたのでもあった。国王であるシュネーベルガW世の容態のことである。
 病に伏していることは皆が知ってはいるが、その後の容態を伝え聞いた者は皆無なのである。
 現在、国の執政は十二貴族の一人であるベッツェン公、クリストフ・フォン=アンハルトが国王の代行を務めて行っている。
 国法によれば、国王がなんらかの理由により執務をこなせなくなった場合、王が十二貴族より代行を指名するよう書かれている。シュネーベルガW世の場合、予め代行を決めていたと伝えられているが、それがどのような理由によるものかは知られてはいない。

 さて、ミヒャエルは様々な思いを抱えながら、とある一軒の居酒屋へと立ち寄った。
「いらっしゃい!」
 景気のいい掛け声とともに、人々の雑多な喧騒が耳に入ってきた。そこに居るものは、大半が仕事を終えて夕食がてら来ている労働者達であった。この地区で働く労働者は、その殆んどが各地からの出稼ぎが多く、そのため、方々の噂話などを集めるには適していると言えた。
 しかし、今日に限ってミヒャエルは、話をする前に見知った顔に呼び止められたのであった。
「ミヒャエル様!」
 名を呼ばれたミヒャエルが驚き様振り返ると、そこに居たのは以前自分の配下であった白薔薇騎士団副長、ヘルマン・ビッターが立っていたのであった。
「何故お前がここに!?」
 ミヒャエルはあまりのことにそう言って後、暫くは言葉に詰まって何も言えなくなってしまった。それも無理の無い話である。
 そもそも“白薔薇騎士団"は、ミヒャエルが城を出る際に国王へと返還していたのである。国王に大事があった際、国王直属の“神聖騎士団"と共に国を護るためであり、国王が病に伏している現在、こんなところへそれも副長が居る筈はないのである。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。私がこの街に居るのには理由がありまして、ここで詳しくは申し上げられないので…。出来れば人気の無い場所でお話したいのですが…。」
「あぁ…分かった。それじゃ、俺が厄介になっている宿へ行こう。そこなら安心して話せるだろうからな。」
「分かりました。では、場所を移しましょう。」
 そう言い終えると、二人は直ぐ様その居酒屋を出て、ルースの宿へと向かったのであった。
 外へ出ると、空気は昼の暑さを残してはいるものの、月明かりの下に吹く風は涼しく心地好かった。
 風にあたりながら二人が歩いていると、ふと芳しい花の薫りに気が付いて足を止めた。
「金木犀か…。もう、そんな季節なのか…。」
 歩きながらミヒャエルが静かに呟くと、ヘルマンはふ
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