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フロンティアを駆け抜けて
死線幽導
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。私もこうしてお前の意志でフロンティアに来ていなければ気づけなかっただろうな」
「……」

 サファイアが顔を手で覆う。自分の表情を隠し、しばし沈黙した。誰も口を挟まなかった。自分の戦術の核を見抜かれたことへの驚きと他に何の感情を抱いているのか。誰にもわからない。

「ふ……見事だ。認めよう。次からはこれを見抜かれていると承知の上で戦わなければいけないな」
「今負けるとは思わんのか?」
「君が最後に出すポケモンは最初に出したメガリザードンX。君のエースであり強力なポケモンではあるがそれ故に誘導……いや『死線幽導』と呼ぼうか。これはタネがばれたところで防げるものではない。私にはまだ控えるポケモンもいる。負ける要素はないよ」
「……何を勘違いしているんだ?」

 ドラコは手にしたボールを見る。そこには自分の相棒が出番を待っている。これが最後に出すポケモン。躊躇いがないと言えば嘘になる。それでもドラコは、己とポケモンを信じる。

「私は確かにリザードンで奇襲を仕掛けたが、ポケモンバトルが始まってからは何も技を使わせていない。ただ使う気がないから戻しただけだ。私が最後に出すポケモンは――砂漠の精霊竜、フライゴン!!」
「ふりゃあああああ!!」

 緑色の体に、赤い複眼。四枚の羽根を開き出てくるのはホウエンの竜の中でメガシンカを使えず、同タイプのガブリアスと比較され見下されやすい存在であるフライゴン。それを見たダイバが困惑した声を出す。

「リザードンを出さないのは確かにルール上問題はない。でも、ここでフライゴンなんて……!」
「……あなた昨日バトルタワーで見下して痛い目見てませんでした?」
「そうじゃない。ドラコのフライゴンは認める。でもフライゴンの『爆音波』はあくまでノーマルタイプでゴーストタイプにはダメージがない。味方をサポートする技はあったけどチャンピオン相手じゃ無謀すぎる……」

 バトルタワーでの戦いではあくまでサポートや追撃などに徹していた。隣にいるボーマンダの体力も残り少ない。サポートするフライゴンよりも高い能力を持つメガリザードンを出した方が逆転の目はある、ダイバはそう言いたいのだろう。


「すぐにわかるさ。ダイバ、そしてジェム……貴様らに精霊竜の奇跡を見せてやろう!!」
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