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フロンティアを駆け抜けて
死線幽導
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とは別人だぜ」
「そうだね、今のチャンピオンは勝負の派手さは相手に委ねるようになった。自分が不動のチャンピオンとなった今、彼自身が派手な技で圧倒しても面白くないからって……彼へ挑戦するトレーナーはみんなたくさんの経験を重ねた手練れだ。故に彼は挑戦者を分析して相手の手を読み切ったうえで迎え撃つ。ドラコさんは彼が招いたゲストだし最初から考えなんて筒抜け同然だろうね。戦いの主導権は委譲し相手以上の異常な読みで勝ち切る。それがあの子の今のスタイルだよ」

 
 チャンピオンは相手が自分を対策してくるのはわかっているし、立場上チャンピオンに挑む前にそれなりの戦いを積み上げて挑んでくる。特にゴースト使いであり十重二十重の回避手段を持つチャンピオンを倒そうと思えば自ずと手段は限られてくる。それを読み切ってしまうことこそ二十年間チャンピオンの座を守るサファイアの強さ――

「……と言われているが。それだけではないのだろう? お前が対戦相手をここまで虚仮に出来る理由は」
「!」

 サファイアがわずかに眉を顰めた。ドラコの言葉が強い確信を持っていたからだ。ドラコはその反応に満足したように言葉を続ける。

「私自身も戦ってみるまで確信はなかったが、今ようやくわかったぞ。やはり私の感じたものは読み切るとかそんなレベルの話ではない。この私が幻覚程度で『冷凍パンチ』を放たれたと勘違いするはずがないからな」
「……大層な自信だが、現実に騙されているのは君の方だ」
「そうだな、騙されたよ。お前は相手の動きなど読み切ってなどいない」
「何が言いたい」

 ドラコはジェムをちらりと見る。やはり涙にぬれているが、それでもドラコの戦いから目を逸らすことなく黙って見ている。ならば自分はこのままいくだけだ。


「ポケモントレーナーは指示を出すために常に相手の動きから次にどうするかを考える。特にゴーストタイプばかりが相手では目で見るだけでは判断できんからな。わずかな気配や意志から読み取るわけだが――お前のゴーストタイプ達はその幽かな気配を自ら生み出している。相手に『次の一手はこうだ』と偽の誘導をする。そしてチャンピオンに挑めるほどの経験を積んだトレーナーならばその前兆に必ず反応してしまう。理屈ではなく本能的に。トレーナーとして潜り抜けた死線を幽かな気配を出すことでいいように操る……そうだな、『死線幽導』とでも呼んでやるか。これがお前が常に相手を上回った本当のからくりだ」
「……!!」

 サファイアの顔に衝撃が走った。それは的外れなどではなく、核心をついていることが誰の目にもわかるものだった。

「相手には自分の意志で戦っていると思わせ、その実最初から自分の目論見通り……このフロンティアを裏で操る貴様の性格がよく出た戦い方だ
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