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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十八話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その8)
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率先して行ったらしい。政府にしてみればそれで遺族が納得してくれれば安いものだと思ったのだろう。カストロプの真実は話せないからな。

「帝国は私から全てを奪った、両親、家、そして友……。それだけでは足りず私の両親の安眠と名誉も奪ったという事ですか。……つまり私はルドルフの墓を暴く権利を得たわけだ、鞭打つ権利を」
笑い声が出た。計算して出した笑い声じゃない、自然と出た。

『ヴァレンシュタイン!』
「何です、クレメンツ教官。不敬罪ですか、名誉なことですよ、今の私は反逆者なんですから。これからも何百万、何千万人の帝国人を殺してあげますよ。帝国の為政者達に自分達が何をしたのかを分からせるためにね……、悪夢の中でのたうつと良い」
笑い声が止まらない、スクリーンの三人が顔を強張らせて俺を見ている。

「私を止めたければ、私を殺すか、帝国を変える事です。言っている意味は分かるでしょう、ミューゼル中将。貴方もそれを望んでいるはずだ」
『……』
ラインハルトの顔が歪んだ。あとの二人が驚愕の表情でラインハルトを見ている。

「貴方がどちらを選ぶか、楽しみですね。私を殺す事を選んだ時は注意することです、弱者を踏み躙る事で帝国を守ろうとする為政者のために戦うという事なんですから。私と戦う事に夢中になっていると後ろから刺されますよ。連中を守るためになど戦いたく無いと言われてね、気を付ける事です」

ラインハルト達が震えているのが分かった。恐怖か、それとも怒りか……。
「また会いましょう。次に会う時は殺し合いですね、こんな風には話せない。楽しかったですよ、ミューゼル中将、ケスラー少将、クレメンツ教官」

通信を切らせた。敬礼はしなかった、必要ないだろう。振り返ると皆が俺を見ていたが直ぐに視線を伏せた。シトレも視線を伏せ黙り込んでいる。やれやれだ、空気が重い。そんな中でサアヤだけが蒼白な顔で俺を見ていた。

彼女は俺が近づいても視線を逸らさなかった。無理をするな、サアヤ。
「ミハマ少佐、私が怖くありませんか」
「……怖いです」
「でも私を見ている……」
「前回のイゼルローン要塞攻略戦で誓ったんです。准将の前で俯くようなことはしたくない、正面から准将を見る事が出来る人間になりたいと……」

必死に笑みを浮かべている。困ったものだ、無下に出来ん。バグダッシュに上手く嵌められたかな、まあ仕方ない。
「私は喉が渇いたのでサロンに行こうと思っています。一緒に行きますか」
「はい!」

大声を出すな、全く。どういう訳か笑い声が出た。まあ良い、犬を一匹飼ったと思おう。犬は飼い主の性格なんて関係ないからな。オーベルシュタインだって犬を飼っていた。サアヤは……、ちょっと毛色の変わった犬だと思おう。飼ったのだから面倒は見ないとな。後でクッキーでも焼
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