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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十八話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その8)
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俺は本心なんだ。嘘吐き呼ばわりの代償は払ってもらう。

世の中には不思議な事がたくさんある。知らないはずの事を知っている人間がいるんだ。特に原作知識なんていう訳の分からんものを持っている人間がいる。可笑しかった、思わず笑い声が出た。そんな俺をスクリーンに映る三人が胡散臭そうに見ている。

「なかなか鋭いですね、でも適当な事など言っていませんよ、ウルリッヒ兄様」
『ウルリッヒ兄様だと、馴れ馴れしく呼ぶな、無礼だろう』
ケスラーが眉を顰めた。昔はそう呼ばれて喜んでいたんだけどな。もう忘れたのか? 思い出させてやろう。

「かつて貴方をそう呼んだ人が居ましたね」
俺の言葉にケスラーが黙り込んだ。そして小さく呟く。“ハッタリだ……”。
「ハッタリじゃ有りませんよ、私は貴方達を良く知っているんです。辺境にクラインゲルトという子爵家が有ります。そこにケスラー少将をウルリッヒ兄様と呼んだ人物がいる」

ラインハルトとクレメンツがケスラーを心配そうに見ている。そしてケスラーは顔を強張らせていた。
「どうしました、ケスラー少将。先程までの勢いが有りませんが……。フィーアに会いたくありませんか」
『……』
ケスラーの顔が蒼白になった、微かに震えているのが分かった。俺を嘘吐き呼ばわりした罰だ、そこで震えていろ。

「世の中には不思議な事がたくさんあるのですよ。知らないはずの事を知っている人間がいる。私もその一人です」
もう一度笑い声を上げた。これで皆俺の言う事を真実だと思っただろう。カストロプの事もだ。セカンド・ステージ終了だな、次はファイナルだ。

スクリーンには蒼白になっている三人が居る。
「ミューゼル中将、教えて欲しい事が有ります」
『……何を聞きたい』
そう警戒するな、ラインハルト。警戒しても無駄だからな。

「私の両親の墓の事です。無事ですか?」
『……』
ラインハルトの蒼白な顔が更に白くなった。正直な男だな、ラインハルト。知らないと言えば良かったのだ。この場合の沈黙は知っているが答え辛いと言っているようなものだ。この通信を見ている人間全てが墓は破壊されたと分かっただろう。

俺は答えを既に知っている。バグダッシュが教えてくれた。フェザーン経由で調べたらしい。覚悟はしていたがそれでもショックだった。
「答えが有りませんね、正直に答えてください、墓は壊されたのですね?」
『……そうだ』
ラインハルトは目を閉じている。この男はそういう下劣さとは無縁だ。少し胸が痛んだがやらねばならない。

「遺体はどうなりました。無事ですか」
『……残念だが、掘り出されて遺棄されたと聞いている』
遺棄じゃない、罪人扱いされて死刑になった罪人の遺体同様に打ち捨てられた。ヴァンフリートの戦死者の遺族がそれを望み、政府がそれを
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