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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十八話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その8)
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、おめでとうございます」
『ああ、有難う』
「カストロプ公もついにお役御免ですか、それともようやく帝国の役に立ったと言うべきかな」

ラインハルトの秀麗な顔に翳が落ちた、ケスラーも少し表情が硬い。なるほど、この二人は知っている。情報源はキスリングだな。クレメンツは訝しげな表情をしている、クレメンツは知らない……。悪いが利用させてもらう、恨んでもらって結構だ。俺達は敵同士なのだ、教官と士官候補生じゃない。

「しかし、惜しい事です。どうせならこの会戦の後に処分した方が良かった。平民達のゴールデンバウム王朝に対する不満を頂点で払拭できた。そうでは有りませんか、クレメンツ教官?」

『何の事だ、ヴァレンシュタイン』
喰い付いて来た。クレメンツは訝しげな表情をしている、そしてラインハルトとケスラーの表情が強張るのが見えた。秘密にしておきたかったのだろう、気持ちは分かる、だがそれが裏目に出たな。

「御存じないのですか、……カストロプ公爵家は帝国への不満を持つ人間を宥めるための道具だったのですよ」
『……』
俺の背後でざわめく気配がした。おそらくここに集結している十三万隻の艦艇全てで同じようにざわめいているだろう。

「カストロプ公は十年以上、財務尚書の地位に有りました。その間何度も疑獄事件にかかわりましたが処罰されることは無かった。疑獄事件だけじゃありません、彼は殺人事件にもかかわっていますが処罰されなかった。帝国の為政者達、おそらくはリヒテンラーデ侯でしょうが、侯はカストロプ公を生かしておけば平民達の帝国へ不満が皇帝にではなくカストロプ公に向かうと思ったのです。そして平民達の不満が溜まりに溜まった時点でカストロプ公を処断する」
『馬鹿な』

クレメンツが蒼白になっている。ラインハルトとケスラーも蒼白になっている。クレメンツは驚きだろうが、あとの二人は全てが明るみに出るという恐怖だろう。俺の背後のざわめきが大きくなった。後で質問攻めだな、これは。

「ミューゼル中将とケスラー少将はご存じのようですよ、クレメンツ教官」
クレメンツがラインハルトを、そしてケスラーを見た。“事実なのですか”とクレメンツが訊いているが二人は無言だ。スクリーンには驚愕を浮かべるクレメンツと顔を強張らせるラインハルト、ケスラーの姿が映っている。この映像だけで俺の話が真実だと皆信じるだろう。

「ヴァンフリートの敗戦が有りましたからね、その不満を抑える必要が有ったという事でしょう。宇宙船での事故死だそうですが仕組んだのは情報部かな、それとも内務省か……。相続問題でカストロプ公爵家を反乱に追い込むとは……、見事ですよ」

俺が笑い声を上げたが誰も一緒に笑おうとしない。面白い話なんだがな、それとも面白いと思っているには俺だけか……。これからもっと面白
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