第44話<日向の涙>
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「ボクたちも同じです」
「同じく!」
「何だ? お前たち聞いてたのかよ!」
(無線回線が、いつの間にか開いていたのか?)
思わず日向を見るが彼女は、いつものポーカーフェイスだ。何処までが本音で何処までが演技なのか? 一筋縄では行かない子だな、日向。
「やれやれ……」
肩をすくめた私は、それでも敬礼を返した。
「分かった、今後も頼む」
『ハッ!』
何だかんだ言っても、お前たちの気持ちは嬉しい。本当に一途な……
「あ痛っ」
筋肉痛が痺れた。
やがて軍用車が崩れた橋のたもとに到着した。水路の上から声がする。
「大丈夫ですかぁ?」
上から覗いたのは青い髪の青葉さん。もう一人は龍田さんだな。
「縄梯子ですぅ。降ろしますね」
ほわっとした龍田さんは「それっ」と言いながら縄梯子を放った。髪の毛までが、ふわっと舞っている。
「大丈夫ですか?」
「ああ、上るぞ」
私は降ろされた縄梯子を使って、ようやく水路から上がった。
(うぅ、身体の節々が痛いぞ)
水路から出るとホッとした。出迎えた青葉さんが敬礼する。
「司令、ご無事で何よりです」
「ああ……何とかね」
ふと見ると彼女はカメラを持っていない。
私は青葉さんに言った。
「珍しいな」
「え? ……えへへ。緊急出動でしたから」
何となく笑って誤魔化された。ちょっとは遠慮しているのだろうか?
そんな私には構わずに彼女さんはテキパキと別のカゴで瑞雲と妖精を回収し始めた。
水路に残っていた日向は妖精たちをカゴに乗せ終わると手馴れた様子で縄梯子から上がってきた。
龍田さんが交信する。
「秘書艦ですかぁ? はい、回収は無事に終わりましたぁ」
そのとき美保湾からズドン! という大きな砲声が響いた。
「艦娘か……? そういえば大淀艦隊はどうなったのだろうか」
私と日向にバスタオルを渡しながら青葉さんが海を見て言った。
「報告します。大淀艦隊は大破6、中破4、小破2です。轟沈は免れましたけど実質的には敗北寸前でした」
さすが記者だけあって、さらりと凄いことを言うな。
そのとき、また海のほうから砲声が響く。
気になった私は美保湾が見える位置に移動した。すると、海面に水柱が上がっていた。
「あの砲声は?」
(記憶違いでなければ山城さんのような気がする)
「はい、あれは山城さんです」
青葉さんは確認するように言う。
「いったい何してるんだ?」
山城さんは、何かを攻撃してるのか?
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