暁 〜小説投稿サイト〜
北欧の鍛治術師 〜竜人の血〜
プロローグ 始まりの咆哮
始まりの咆哮
[2/3]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
論することはできない。ここで否定の意を示せば自分はこの国の王族を信用していないと公言するのと同義。王家に仕える者としてそのような発言すれば首が飛ぶのは確実であった。その時、大臣の1人が席を立ち、言った。
「姫様、この問題に関しては我々はここで口を動かすことしかできませぬ。しかし姫様自身があちらへ出向かれるというのであれば我らは・・・少なくとも儂個人としては姫様を全力でサポートさせていただきますぞ」
杖を片手にしわがれた声でそう言ったのはこの会議室にいる人間の中で年長者でありながら会議には一切口を出さなかった老齢の大臣、ガストン・ガラストス。ラ・フォリアがまだ1桁の頃から政務に追われて娘と遊べない国王の代わりによく女中とラ・フォリアの世話をしていた。ちなみにラ・フォリアからは昔の癖で爺やと呼ばれている。
「儂らがここにいるのは王家に仕え、サポートするため。その務めを果たすのに何の疑問がいりましょうか」
「助かります」
「姫様は姫様が正しいと思う事をなさるのです。この老骨ができるアドバイスはこれくらいですかな」
「すぐに飛空艇の用意を!彼女の遺体だけでも回収します。護衛騎士はカタヤ要撃騎士を含め50名、お願いします」
ラ・フォリアはそれだけ言うとすぐさま踵を返して会議室を出て行った。
「ふぅ・・・相変わらず元気なお方じゃ」
ガストンもそれだけ言うと杖を鳴らしながらラ・フォリアを追いかけるように会議室を後にした。そのままラ・フォリアたちは飛空艇でアルディギアを飛び立ち、遺体を受け取るためにドイツのとある病院に向かった。



ドイツ とある病院

ここでは現在、外科の医師と看護師が慌ただしく病院内を走り回っていた。運び込まれた急患の少年の処置に追われているためだ。身体中に火傷を負い、そのほとんどが皮下組織に火傷が達するV度熱傷と診断。視覚も失っているであろうとされ、生存は絶望的かと思われていた。しかし、その少年と同時に運び込まれた少女の遺体はその急患とは同じ事故現場にいたとは思えないほど傷が少なく、少年の血と煤で多少汚れている程度だった。 この時、医師の誰かが言った。"少女の体を移植しよう"と。他の医師たちも少年を助ける方法はそれしかないと暗に承知してはいたのか、すぐに手術が開始された。手術自体は8時間ほどの時間をかけて行われ、結果は成功。少年の容体は安定しはじめていた。アルディギアから自国民の遺体の引き渡しを求めて使者が来たと伝わったのは医師たちの顔に疲労の色が浮かび、誰もがぐったりしている時だった。




アルディギア飛空艇

「なるほど・・・彼女の遺体は近くにいた少年に移植された、と」
現在、ラ・フォリアは機内で頭を悩ませていた。なんせ、回収するべき遺体は移植され、彼女の体はほとんど残っていないとのことだから
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ