第42話<波状攻撃>(改)
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る手が緊張する。
「うおぉぉ」
珍しく叫ぶ銃座の日向……彼女は全弾を撃ち尽くす如く全方位へ向けて激しく応戦した。その結果、上空の敵機が一瞬、私たちから距離を取って離れた。
「しめた!」
私は、その隙に反対車線から鎮守府の埋立地へ向けて左折して一気にアクセルを踏み込んだ。
交差点を走り抜けて埋立地に入る。松林の間の道路を通過して直ぐに鎮守府手前の交差点からは右手に司令部の赤いレンガの壁が見えてきた。
少しホッとした私は一瞬アクセルを離して減速させた……だがその一瞬の油断がまずかった。敵はそれを狙っていたようだ。
「司令!」
日向が叫ぶ間もなく離れていた数機の敵機が、あっという間にその交差点に向けて攻撃を仕掛けて来た。
「!」
私と日向は思わず緊張した。
いや正直、これで終わりか? ……思ったのだが意外にも敵の攻撃目標は軍用車ではなかった。
連中は交差点の直前にある小さな橋へ集中砲火を浴びせた。私たちの目の前に一瞬、大きな火柱が上がり激しい煙が立ち上った。
減速していたとはいえ60キロは出ている車だ。直ぐには停まれない。
「あ!」
叫ぶ間もなく軍用車は壊れた橋へと突っ込んだ。
私は瞬時に思い出す……確か交差点を渡って直ぐのところに十数メートルの小さな橋があった。普段は全く意識しないほど小さいものだが、その下には美保湾からの海水が流れ込む水路になっていた。
(迂闊だった。ここに橋があったんだ)
そう思ったが後の祭り。しかも私は今日、美保では初めて軍用車を運転している。
敵は鎮守府周辺の細かい地理や、こちらの状況を実に良く調べていることを悟った。悔しいが情報戦で負けた気がした。
だが、こちらには捕虜も居る。そこまでの情報取得能力があるなら当然、捕虜のことも考えているはずだが?
解せない。先ほどの幹線道路での攻撃を思い出して疑問が湧く。
(やはり見殺しなのか?)
いろいろ頭を巡る。
(いや、もしかしたら……)
アレコレ考えいていた時間は、ほんの一瞬だったに違いない。
3人を乗せた軍用車は交差点へ入る手前の水路へとジャンプ。一瞬、体が浮くような感覚があって、そのまま水路へと落下して激しい水しぶきを上げた。
シートベルトはしていたが落下の衝撃で私はフロントガラスかどこかで頭を強打した。同時に意識が遠のく。
それはかつて訓練や戦場で死に掛けた際に感じた、何かが切り離される感覚に似ていた。
(私は、ここで死ぬのかな?)
「司令!」
最後に聞いたのは日向の叫び声。そして差し出された掌が見えた気がしたが……あとの記憶は途切れた。
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