第84話 選択
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深く椅子に腰掛ける。ギシギシと軋む音がまるで少年の歪な性格を表現しているかのように感じ取れた。
「結構特徴的なのよね。ここに来る前に小児科にいたから。事故や病気で親を失った子供に......誰にも頼らねーよって雰囲気を常に出していて強がりを見せているみたいな」
あ、確かにそうだった
身体が鈍ると言っては暇さえあれば動いていた
心配すれば「うるせぇ」って返ってくる
頼れる人が居なかったからなんだ
それなのにあたしがピンチの時には駆け付けて助けてくれたし、意外な行動もしてくれた
弱音ばかり吐いているあたしとは違い弱い部分を見せないように彼は何かで硬く閉ざしている
寄り掛かかるだけ寄り掛かかって、サソリが頼ってくれるように振舞って居なかった......
「......」
佐天が伏し目がちに胸を押さえていて、忙しなく踵が上下しているのを懐かしそうに眺めながら看護師はゆったりと佐天の頭を撫でる。
「これも経験だけどね。何も言ってこないのは何か無茶しているって事よ」
「痛った!」
看護師が佐天の背中を叩いて焚き付けるように力強く言い放つ。
「行ってきて良いわよ。絶対に無茶してるんだから」
「!?......は、はい!!」
押された佐天は二、三回ヨロケながらも佐天は自分のペースを取り戻しながら歩む足を止めずにナースステーションから飛び出した。
「会ったらちゃんと健康診断に来るように言いなさいよ」
簡単に行ってしまえばこんな時に外に送り出すのは良いのだろうか?
いや、きっと悪い事だし責められたら責任を負わなければならないだろう
命を守る医療従事者としては失格だ
だが、どんなに医療が発達していこうが命に無限なんて存在しない
どんなに健康に気をつけた所で人は100年足らずで死ぬ者が大半......人は死ぬ
どんなに治療してもどんなに手術してベッドに寝かせても命が亡くなる
だから
だからこそ問いていかなければいけない
今日死ぬと分かったら
貴方はどうするだろうか?
後悔のない選択をして欲しい
生きる事に絶望しないで欲しい
一目散に逃げて良い、生きて欲しい
生きて生きて、どんな形であっても良いから
「会えるなら逢っておきなさい!すぐに駆け付けたいのは見え見えよ」
真っ白な病院の中を少しだけ早歩きで通り過ぎる佐天。
たくさんの人で溢れかえっている現場の状況だが佐天の意識には昇らずに脚を動かす事と息を整える為に胸に手を置いている。
自覚した!
自覚してしまった!
人として好ましいから恋人としての好きに昇華してしく
逢いたい
サソリに逢いたい
そんな想いが強く交差して身体を火照らせる。
「好き......好き好き......大好きだ」
恋は切ないとは
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