第84話 選択
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目紛しく運び込まれる意識不明の患者達への対応に右往左往しながらも出来る限り迅速に事を運ばせる。
「また!アンタ達ですか?」
物語の1番最初にサソリの担当看護師がカルテにボールペンで病状を書き込みながら不機嫌そうに言った。
かつて起きたレベルアッパー事件を彷彿とさせながらも規模も精度も上がった無差別テロのような状態から何故か医師や医療従事者は意識を失わずに治療に当たっていた。
このような状態であるにも関わらず死傷者は少なく何者かが水面下で動き被害を最小限に抑えているかのようで......静寂すら感じた。
「なんでこうも貴方達の周りでトラブルが起きるんですかね?」
「い、いえそのなんでかなー......なんて思っちゃいまして」
カルテに事細かく今後の治療方針を立てて、恢復を目指していく看護師としての気概を感じた。
澱み無く動くペン先に側で腰掛けていた佐天が魅入った様子で意識せずに声を掛けた。
「な、慣れているんですね」
前に起きて対処方が分かっているかのようなテキパキとした動きだ。
「まあね。似たような症状だったからね」
「似た症状ですか?」
「なんて言ってたかしらねぇ......れべるなんたらって」
「れ、レベルアッパー?」
「あー!それよ!あれ?......確か貴方も倒れていたわね」
「はい......その恥ずかしながら」
看護師は思い出したかのようにペン先を回して、にこりと笑う。
「そういえばサソリ君は元気でやっている?」
「えっ?は、はい」
「まあ、重傷なのに筋トレするくらいだから大丈夫だと思うけどね」
「そ、そうですね......」
蘇る入院患者に似合わぬ悪行の数々。
医師の目を盗んで腕立て伏せ
壁を二足歩行で昇る
無許可で抜け出して不良と喧嘩をしてくる
「あんだけ悪ガキを相手にしたの久しぶりよ」
「あの時は申し訳ありませんでした」
「でもね......貴方が倒れた時は落ち込んでいたわね」
「!?」
「ずっと貴方の頭を撫でていたわね......寂しそうに」
サソリが?
あのぶっきらぼうでデリカシー無しのあのサソリが!?
「その後に私を騙して病院から抜け出して、事件を解決してちゃうし」
「知らなかったです......」
「ペラペラ話す方でもないわね。ひょっとして付き合っている?」
いきなりの看護師からの爆弾発言に佐天は顔を真っ赤にしながら首を横にブンブン振り回した。
「そそそそそんな事ありませんよー!」
「あらそうなの?少しだけ自信あったんだけどね」
看護師はペンを唇の下に挟み込むとふにゃふにゃと動かして物思いに耽った。
「あの子ってもしかして両親いない?」
「......そう話してました。小さい頃に亡くなったらしいです」
「そう、やっぱりね」
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