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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十七話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その7)
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ている」
……但し要塞が陥落していれば話は別だ。いっそ要塞が陥落してくれれば……、そうであればこちらもオーディンに撤退できるのだが……。今のままでは俺の率いる三万隻も殲滅されかねない。
溜息が出た。俺だけではない、ケスラーもクレメンツも誘われたように溜息を吐いている。ヴァレンシュタインはイゼルローン要塞を囮にして帝国軍艦艇を次々に引き寄せ各個に殲滅している。蟻地獄、巨大な蟻地獄に俺達を引き摺り込もうとしている。
「反乱軍が要塞を攻略しているなら上手く行けば後背を衝けるだろう。もし我々を待ち受けているなら……、戦闘に入る前に撤退するしかないだろうな……」
後背を衝くなど先ず不可能だ、ヴァレンシュタインはそんな甘い敵ではない。だが最初からその可能性を否定して撤退する事は出来ない。イゼルローン要塞に行くしかない、そして味方を見殺しにする判断をすることになるだろう……。
宇宙暦 795年 5月 14日 10:00 宇宙艦隊総旗艦 ヘクトル エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
目の前にイゼルローン要塞が有る、艦隊戦力を失った要塞だ。攻撃する最大のチャンスなのだが同盟軍は要塞から距離を置き、包囲するでもなく遠巻きにイゼルローン要塞を見ている。
普通なら各艦隊司令官から攻撃要請が出ても良いのだが誰も総司令部に要請をしてこない。七万隻近い敵の大軍を殲滅した、その事実が艦隊司令官達を大人しくさせている。良い傾向だ、馬鹿で我儘で自分勝手な艦隊司令官等不要だ。総司令部の威権は確立された。
既にこの状態で二十四時間が過ぎた。要塞を攻撃するつもりは無い、要塞など攻略しても同盟にとっては一文の得にもならない。帝国は要塞を国防の最前線基地として使うつもりだろうが俺にとっては要塞はあくまで敵艦隊を誘引するための餌だ。敵を釣る餌を自分で食う馬鹿は居ない。
もう間もなくラインハルトの艦隊が此処に現れるはずだ、味方は十万隻、ラインハルトは三万隻、叩き潰すチャンスだがラインハルトがまともに戦うはずはないな。いざとなれば帝国領に撤退、いや後退戦をしかけようとするかもしれない。まあいい、無理に殲滅することは無い。ラインハルトの艦隊は生かして利用する。今回はそれが出来る。
遠征軍と駐留艦隊は殆ど全滅するまで戦った。一度、降伏勧告を出したが受け入れられることは無かった。クラーゼン、シュターデン、ゼークト、全て戦死するまで戦った。彼らが何を考えたかは分からないでもない。イゼルローン要塞を守るためには少しで長く俺達を引き留めなければならない。その一心で戦った……。
こちらには要塞を攻略する考えは無いのだが、そんな事は向こうには分かるはずもない。最後まで自分達の戦いが帝国の利益に叶うと信じて戦ったのだろう……。気の重い戦いだった。ヤンも
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