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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十七話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その7)
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軍艦艇六万五千隻、兵員七百万の運命は確定した。彼らに残された道は戦死か、捕虜になるか……。だがイゼルローン要塞の事を考えれば少しでも長く抵抗を続けるだろう、つまり戦死だ。
「あとどの程度抵抗できるかな」
俺の問いかけにケスラーとクレメンツが顔を見合わせた。おそらく彼らの間では既に検討されているはずだ。俺の見込みではあと半日……、二人の考えはどうか、俺と同じか、それとも違うのか……。この二人の能力をどの程度信じられるのか、今、この場で確認しなければならない。場合によってはイゼルローン要塞付近で戦闘と言うこともあり得るのだ。
ケスラーが言い辛そうに答えた。
「……長くても今日中でしょう、それ以上は……」
同じだ、俺と同じ予測をしている。その事に安堵したが見込みには溜息が出た。俺だけではない、クレメンツも溜息を吐いている。余りにも悲惨な未来だ。
「反乱軍は移動を含めても十三日にはイゼルローン要塞の攻略が可能となるでしょう。果たして我々が到着するまで要塞は持ち堪える事が出来るかどうか……」
ケスラーが言い終えてから顔を顰めた。最短でも二十四時間は要塞単独で反乱軍の攻撃を凌がなければならない。十万隻の大軍を相手に可能だろうか……。
「いや、参謀長、反乱軍は要塞を攻めずに我々を待ち受けるかもしれません。その場合、我々は酷い窮地に追い込まれるでしょう。遠征軍や駐留艦隊同様殲滅されかねない……」
「……」
クレメンツの言うとおりだ。これまでの反乱軍の動きを見れば明らかに彼らは艦隊戦力の殲滅を狙っている。我々が救援に行くのが分かっている以上、待ち受けて殲滅を狙う可能性は高い。相手は精鋭十万隻、こちらは訓練不足の三万隻、要塞を攻めている背後を衝くならともかく待ち受けられてはとても勝負にはならない。
「しかしイゼルローン要塞を見捨てるわけにはいかない、十万隻の大軍に囲まれた要塞を見捨てれば、それだけで将兵の士気はどん底に落ちるだろう。帝国軍は要塞を失った上に軍の統制さえも取れなくなる恐れがある」
ケスラーが沈痛な表情をしている。
「我々が全滅してもそれは変わりません。むしろ我々が無駄死にし損害が大きくなるだけです。反乱軍は我々を殲滅した後、イゼルローン要塞を攻略するでしょう。撤退するべきではないでしょうか。この状態では撤退してもやむを得ない、上層部も分かってくれるはずです」
クレメンツが苦渋を浮かべている。味方を見殺しにしろなどとは言いたくないだろう。だがそれでも感情を押し殺して俺に進言してくれる。ケスラーもクレメンツも能力だけではなく人間としても信頼できる男達だ。
「……卿の懸念は分かる、それは私の懸念でもある。だが、イゼルローン要塞を見捨てる事は出来ない。軍務尚書からもイゼルローン要塞を何としてでも守れと言われ
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