幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十八話:眠れる騎士団
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毛を手櫛で直してやる。
「ぁ、や、その……ありがとう、ございます」
「ひゅーひゅー! お熱いねぇお二人さん!」
途端にしおらしくなってしまった彼女に疑問符を浮かべていると、後ろからノリが冷やかしを入れてくる。全く、このお調子者はいったい何を言っているのか。
「ただの兄妹のスキンシップだろう? なにをそんなに囃し立てることがある」
「ええ……それ本気で言ってんの、レン?」
「? ああ、もちろん。な、ラン」
「ア、ハイ、ソウデスネ」
なぜか周りの気温が少しだけ下がったような気がする。というか、なぜノリはそんな目でオレを見てくるのだろうか。居心地の悪さを感じて、空気を変えるために大太刀を鞘に納める。
「準備はもう済んだのか?」
オレとユウキがウォーミングアップを始めたのは買い出しの間のスキマ時間を埋めるためだったのだが、ジュンやノリが参戦してきたということは買い出しは終わっているのだろう。ここで敢えて問いかけたのは、ここにいないメンバーがいるからだった。
「あ、はい。今はシウネー達が宿に買ったものを運び込んでるはずです」
「そうか。なら余計な時間を取らせてしまったらしい。すまないな、ラン」
「い、いえ。分かってくれたならいいのです!」
スリーピング・ナイツはとある理由を持つ人間たちが集まって作られたギルドだ。その理由は、構成メンバーのほとんどが重病を患っているという点にある。もともとはバーチャル・ホスピス『セリーン・ガーデン』で知り合い、ランが立ち上げたのだという。ユウキは未だAIDSの症状が発症していないが、結成当時から在籍しているらしい。なんの病も患っていないオレが彼らと行動を共にするようになったのは、今日の目的にのみ集約される。
「今日はがんばろうな」
「はい! なんと言っても、今日が最後の冒険ですから!」
今日は、スリーピング・ナイツ最後の日となる。
解散の理由は単純だ。ギルドリーダーであるランの容態が悪化し、そして他のメンバーもしばらくの間治療に専念することになるから。それ故に一旦スリーピング・ナイツは解散とする意向が、他でもないランやメンバーから提案された。オレとユウキが、なにか言えるはずもなかった。
ただ最後に皆で最大の思い出を作ろうということで、この妖精の世界最大の試みを、たった一つのギルドで行うことにしたのである。
「……藍子」
なにか言わなければと言葉を探すけれど、オレが口に出せたのは彼女の名前だけ。そんなオレに笑顔で振り向き、彼女は言うのだった。
「この世界では『ラン』ですよ、兄さん?」
「……そうだな、すまなかったよ『ラン』」
彼女は現実世界と仮想世界を区別したがる。どうい
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