幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十八話:眠れる騎士団
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ながらもう遅い。剣先で首、心臓をなぞるように斬る。この世界にはデスペナルティがあるらしいから、なるべくHPを削り取ってしまわないように注意する。
「最後は――」
「おらぁっ!」
大剣の大振りの一撃を浮かび上がって避ける。背後で聞こえる風切り音に安堵を覚えながら、右回転の遠心力を乗せた薙ぎ払いをジュンの腕に叩き込む。この世界は現実とは違い、腕や足といった体の一部にも装備と同じく耐久値というものが設定されている。その耐久値がなくなれば部位欠損といった状態になるのだが、耐久値がまだ残っている状態では、幾らクリーンヒットしたとしても腕が切り落とされることはない。まあ、綺麗に決まれば決まるほど耐久値も減りやすいのだが。
「まだまだぁ!」
オレと同じ高度まで上がってくるなり、ジュンは翅と体全体を使って大剣を振り回し始める。その速度は武器の重さと相まって中々に危険だ。なんとか大剣の側面を鞘で殴りつけ軌道を変える。ジュンの攻勢が緩んだ隙に一度離脱しようとして、気づく。
「な」
かなりの上空で空中戦を繰り広げるオレとジュンの、更に上。
「に」
小柄な人影が、太陽の光を遮っていた。
「を」
ここまで来て、ジュンもその存在に気付いたのだろう。小さくやべっ、と声を上げた。
「しているんですかぁぁぁぁっ!!」
空に響く怒号。とてもよく聞き覚えのある声に、思わず冷や汗が流れる。右下の虚空に目を向けてみると、表示された時間は既に集合時間から大分経過してしまったいた。これでは、生真面目な彼女が怒るのも無理はない。
剣をぶつけ合ったジュンと視線が交わし、互いに苦笑いを浮かべた。
「戻るか」
「そうだなー」
当初の目的であったウォーミングアップは済んだことだし、これ以上続けても意味はないだろう。既に地上に降りていたユウキとノリは正座させられているようだ。これは長くなるかもしれないな、とため息と共に苦笑いが浮かんだ。
† †
「全くもう! 時間厳守で、と言ったはずですよ!」
空から降りていくと、先に地面に着いていた女の子らしい声がオレを出迎えた。こういうところは昔から変わらない。変に生真面目で、いつもやんちゃな盛りなユウキのストッパー役だった。
「兄さんはいつも私の言うことを聞いてくれないんですから
……」
不貞腐れたように頬をふくらませながら、彼女はぐしゃぐしゃとその鮮やかな紫髪を?き乱した。
「そんな乱暴にすると、せっかくの髪型が台無しになるぞ」
ユウキよりも女の子らしい彼女だが、こういう仕草の一つ一つは本当に姉妹なんだな、と感じることがある。
ぴょこんと立ったアホ
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