幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十八話:眠れる騎士団
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手を取る。
立ち上がったボクに苦笑いを向けて、兄ちゃんは身支度に戻っていった。
なんとなく、触れ合った手を眺める。
兄ちゃんがソードアート・オンラインから帰還してから二か月くらい。そしてボク達スリーピング・ナイツに加入してから一か月が経っていた。この一か月は本当に楽しかった。この時間が永遠に続けばいいと思ってしまう程に。
だけど、運命は残酷だった。
一週間前、姉ちゃんの容態が急変したのだ。
元々、兄ちゃんを除くボク達家族はHIVに感染している。ママがボク達双子を出産する時に必要とした輸血用血液製剤が汚染されていたことが原因だ。ママとパパは、AIDSが発症し、一年前に亡くなった。姉ちゃんもママ達とほぼ同時にAIDSが発症、今まで闘病を続けてきた。けれど、もう限界だったのだろう。主治医の倉橋医師が言うには、あと保って一週間。明日にはどうなっているか分からない、とても危険な状態だと。
姉ちゃんには、そのことは伝えてある。この仮想世界でにダイブしてきた倉橋医師を交えたスリーピング・ナイツの全員で聞いた。事実上の余命宣告に、姉ちゃんは納得したように微笑んでいた。きっと、予感はあったのだろう。ママとパパが天国へ行った後、姉ちゃんももう長くないって気づいていたはずだ。それでも今日まで懸命に闘病を続けてきたのは、きっと――。
「さて」
兄ちゃんの声にはっとして目線を彼に向ける。どこかの軍服のような装備を身にまとった兄ちゃんはニッと笑って言った。
「ウォーミングアップでもするか?」
† †
アルンから出て少しした草原。SAOと同じく圏内とされる場所ではHPに損害の出る攻撃はシステムに阻まれるという事で、オレとユウキは圏外に出てきていた。目の前で体を伸ばしているユウキを眺めながら、地面に突き刺した槍に寄り掛かり空を見上げる。
「そういえば、兄ちゃんってあっちでも槍を使ってたの?」
「いや、主に使っていたのは直剣だな。むしろ槍はあまり使ったことがない」
SAOでの話だ。『無限剣』なるスキルを持っていたオレは武器の切り替えが即座にできることを利用して、様々な武器を取っ替え引っ替え使っていた。初期から愛用していた片手用直剣は勿論、刀、両手用大剣、両手用斧などは粗方スキルレベルは上げきっていたはずだ。槍を使わなかった理由は、主にパーティーを組むことが多かったアイギスの中に一人槍使いがいたこと、そして攻略組プレイヤーに匹敵する実力を持っていたユメが使っていたこと、そして攻略組全体で槍使いの数が比較的多かったことから、パーティ全体のバランスを考えてのことだった。
「じゃあどうしてこっちでは槍を使ってるの?」
「そうだなぁ……」
槍を使いだしたのは、正直に言えばた
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