黒衣を狙いし紅の剣製 08
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人っ子だったから兄妹に憧れたこともあるしな」
「お兄……ちゃん。……ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい」
溢れ出す涙と一緒にクロは剣を手放し、俺にしがみついてきた。
正直に言えば怪我をしているだけに痛みもあったのだが、クロエというひとりの少女を救うことが出来たからか、傷みよりも安らぎの方が強く思えた。彼女の綺麗な顔が血で汚れるのは少しばかりあれだったが……
『何を……何をやっているのだこの贋作! さっさとその男を殺さないか。その位置なら武器を出して一突きするだけだろう。茶番をしてないでさっさと殺せ!』
「嫌、嫌よ!」
『何だと……』
「私はもうあんたに従いたくない。人を傷つけたくなんかない。この人を……お兄ちゃんを斬りたくなんてない!」
クロが初めて行うであろう明確な反抗。
それにグリードは呆気に取られたのか、あちらから聞こえる声が止まった。
これで事態は収拾される。あとはどうにかここを出て……管理局にでもあいつらにでも連絡を入れなければ。この施設に居ては通信が妨害されて行えないようだし。
「グリード……今すぐ扉のロックを外せ。もう終わりだ」
『グフフ……グヘヘヘヘヘ……フハハハハハハハハハハハ!』
「何がおかしい? 気でも狂ったか?」
『狂ってなどいないさ! 小僧、貴様は何も分かっていない。その贋作を止めれば終わりだと思っているのか?』
どういう意味だ?
クロに戦わせたのはグリード自身に戦う力がなかったからのはず。ならばクロが戦うことをやめたのなら、もうあいつに戦う力は残っていないはずだ。
『貴様にも言ったはずだがな。今日は私のデバイスを見に来てほしいと。貴様と真逆の考えを持つ私が……この優秀な私がこのような事態を想定しないとでも思ったか!』
「……まさか」
『そのまさかだよ! ここからが本番だ!』
グリードが何かの装置を取り出し、そのスイッチを押した。それと同時にクロが胸元を押さえて苦しみ始める。まともに呼吸すら出来ていない苦しみ方なだけにただ事ではない。
「グリード、お前この子に何をした!」
『何をだと? 貴様も技術者の端くれなら予想くらい出来ているのではないのかね。それでもあの天才どもの息子か! やはり貴様は親の七光りで今の地位に居る無能だな。まあいい、最後の手向けに教えておいてやろう!』
グリードが部屋にある設備を操作したかと思うと、俺の目の前に半透明なモニターが現れた。そこに表示されているのは、人を道具としてしか考えていない倫理的に反するデバイスの説明。
本来デバイスというのは基本的に魔導師が魔法を行使する際に補助してくれる装置。主動なのは魔導師側にあって、デバイスはそれに従う。
だがこのデバイスは違う。
これは……デバイスが戦う
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