黒衣を狙いし紅の剣製 08
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は俺のことを殺そうとしていても、心がそれを拒否しているからだ。
今のクロではまとも剣は振るえない。それどころか俺に近づくことも出来ないかもしれない。そう思えるほどにクロの表情が平静さが欠けている。
「クロ、もうやめよう? お前は本当は人を傷つけれるような奴じゃない」
「そんなこと……来ないで。来ないでよ。来ないでって言ってるでしょ! それ以上来たら本当に……!」
「ならやってみろ」
「え……」
「今の俺じゃお前には敵わない。殺したいなら殺せ」
「きゅ、急に何言ってるの……言ってること真逆じゃない」
「ああ、だけどお前は俺を殺さない。殺せないって信じてる」
何故なら俺とクロの間には、わずかばかりではあるが絆も思い出も存在している。だからクロは俺を殺せない。一度は覚悟で斬ることが出来たとしても、二度は覚悟があっても出来やしない。人を斬る感覚を覚えてしまっただけに。
「信じてる? 私は今日のためにあなたに近づいたのよ。そんな相手を信じるってバカじゃないの? 大体私とあなたとの間に絆や思い出なんて……」
「あるさ」
たった1日の……ほんのわずかな時間だったが、一緒に過ごしてお前が本気で笑った日がちゃんとある。
「だから……今日も俺が買ったあれを付けててくれたんだろ?」
ハート型のアクセサリー。
それが俺とクロを繋ぐ確かな証。今はバリアジャケットを纏っているので見えないが、俺の見間違いでなければデバイスが起動される前……私服姿の時は彼女の首元にあるのが見えた。
何より……クロが今自分の首元に手を持って行っているのが証拠だろう。今はそこになくても、確かにそこに存在していなければそんな行動をするはずがない。
俺がゆっくり近づいてもクロは逃げようとはしなかった。ただ黙って俯いていた。そんな彼女に俺は剣を持っていない左手を伸ばし……そっと頭の上に乗せる。
「クロ……もういい。強がる必要もなければ、したくもないことをする必要もない」
「でも……私には」
「今まではそれしかなかった。でもこれから違う。お前が自分でやりたいこと、好きなことを見つけていけばいい。他の誰かがお前を否定しても……俺はお前を認めてやる。クロエっていうひとりの女の子だって。ひとりの人間なんだって」
大粒の涙がいくつも床に落ちていく。
ゆっくりと上げられた顔は、必死に涙を我慢しようとしても出来ていない子供のそれで。本当のクロエという少女が居る気がした。
「ほんとに? 私は……あなたを傷つけるために生まれてきた。実際にあなたを傷つけた……それでもあなたは…………私のこと認めてくれるの?」
「ああ、認めるさ。今回のことだって……少し兄妹ケンカが行き過ぎただけだ。お前が望むのなら本当に兄にだってなってやるよ。俺は一
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