黒衣を狙いし紅の剣製 08
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の男を殺せ! これ以上その男の姿も声も視線さえも感じたくない。今すぐ肉片に変えろ!』
グリードの怒声にクロは一瞬身体を震わせる。
おそらくクロの中には迷いがあるのだ。俺の命を絶つと覚悟を決めていても、心の底ではそれを望んでいない。良心の呵責が彼女にはある。
そうでなければ、俺がグリードと話している間ずっと動きを止めていたことの理由が説明できない。俺の意識は少なからずグリードに割かれていた。もしも襲い掛かっていたならば、俺は反応が遅れ窮地に立たされていたことだろう。本当に殺したいと思っているのなら狙わない理由がない。
だが……クロは静かに左右の剣を構え直し始めた。俺の命を絶つために。
「……クロ」
「ごめんなさい……あなたが悪い人じゃないのは分かってるし、間違ってるのはあの人だと思う」
「なら……」
「でも……! それでも……あの人は私のパパだから。私を作ってくれた人だから……今だけは必要としてくれてるから。だから私は……あなたを殺すわ」
泣きそうな顔で告げられる死刑宣告。
クロは手に持っていた夫婦剣をさらに2組生成し、両手に3組6本の剣を握り締める。両腕を交差させたかと思うと、勢い良く振るって2組の剣を投擲。投擲された剣達は回転しながら俺を中心にする形で前後左右から襲い掛かってくる。
そこに夫婦剣を握り締めたクロが前から突撃。この状況下で最も安全な策は全方位の防御を展開すること。しかし、それを見たクロは突撃をやめて射撃戦にシフトしてもおかしくない。そうなれば蜂の巣にされてしまうことだろう。
となれば……活路はクロへの特攻。幸い投擲された剣にはタイミングさえ合えば抜けられるスペースはある。ここは覚悟を決めて……
「な…………」
意識をクロに戻した瞬間、そこに彼女の姿はなかった。
迫り来る剣に意識を向けたのは事実だが、それは時間にすれば一瞬の事。たとえフェイトほどの機動力があったとしても動きがあれば見逃すはずがない。
それにも関わらず、俺はクロを見失った。それをつまり彼女にはまだ他に隠し玉があったことを意味する。
「――瞬翼三連!」
静かに紡がれた言葉を耳にしたとき、すでに俺の身体は瞬く間に翼が三度羽ばたくかのように斬り裂かれていた。
何が起こったのか理解する間もなく、重傷を負った俺はその場に倒れ込んでしまう。
〔マスター、マスターってば!〕
ファラが慌てた声で話しかけてきているが、頭の中に直接聞こえているはずのその声も少し遠く感じてしまう。視界に映る赤い水たまりからしてかなり出血しているようだ。痛みから考えてもかなりの深手だろう。即死しなかっただけマシかもしれない。
『フフフ……フハハハハ……フハハハハハハハハハハハ! やった、ついにやったぞ! 私の
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