第90話 魔界衆との戦い(その四)
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
離し合いなのだが、それは武蔵退治の秘策だったのだ。
剣気そのものであれば、おそらく十兵衛と武蔵は互角。なぜなら、十兵衛は武蔵と同じ剣気を放つものと、父・但馬守や叔父である尾張柳生の柳生兵庫助利厳もが認めるものだった。
が、十兵衛が武蔵と違うとこは、武蔵は己の剣を磨き己の兵法を築き上げ新免、剣聖とまで言わしめたが、十兵衛は違った。
但馬に謹慎を命じられた時から、城にこもり、はたまた野山を駆け、旅を愛し、飄々と生きてきた。それは、剣を磨き、独自の兵法を構築するものではないが、天上天下唯我独尊などとは思いもせず、自由気ままな発想で敵を倒すというものに変わっていった。
だから、十兵衛は、武蔵を一人で倒そうとは思っていなかった。そして、土方も武蔵の動きをずっと観察し機会をうかがっていた。
「土方殿、必ず俺が機会を作るその時が勝負だ」
十兵衛のこの言葉を土方は信じていた。
「そのためには、土方殿。気を抑えよ。できれば、消せるようにしてほしい。俺も武蔵殿も気を察することができる。そして、必ず、武蔵殿は気を俺に集中させる時がある」
十兵衛は、土方にそう言った。
土方もまた、勝負所を見極める天才だった。
寺田屋事件の時も会津戦争の時も。そして、魔界衆との戦いの時もここぞというポイントを見逃さず、勝利を手中に収めた。
難敵・宮本武蔵との戦いも勝てると思っていた。なぜなら、柳生十兵衛という頼りになる男がいるからだ。
そして、その時が目の前で起こっていた。
武蔵の気が十兵衛のみに集中しているのだ。
(いまだ!!)
土方は気配を消し、武蔵の背後を取った。そして、一気に武蔵の心臓目がけて剣を突き刺した。
「ぐっ」
武蔵の小さなうめき声が聞こえた。が、武蔵の顔は鬼のような形相に変わった。
「この虫が!!うろちょろするな!!」
武蔵は土方を首だけで振り向き睨み付けた。
(勝機!!)
十兵衛もまさに疾風のごとき動きで武蔵に向かって行き、今度はこみかみのあたりに思いっきり剣を突き立てた。
「ぐわぁ。お、おのれ、十兵衛!!」
最後の気力を振り絞るように武蔵は、十兵衛の体目がけて剣を振り抜こうとした。
「もうよいでしょ、武蔵殿」
十兵衛は、その剣を二刀の片方で受け、とどめと言わんばかりに武蔵の首をはねた。
「畜生ぉーー!!」
はねられた武蔵の首は、そういうと空に消え、血を吹き出していた体も同じく消えていった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ