黒衣を狙いし紅の剣製 07
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グリードが居る部屋に向けて魔力斬撃を放つ。こちらの様子が見えるように透明になっているが、強度は室内の壁と同じ。それ故に本当の意味で黙らせることはできない。
だがあの男は戦闘訓練なんて受けたこともないだろう。だから大丈夫と分かっていたも自分に魔法が飛んでくれば少しの時間は怯むはずだ。
その予想通り、魔力斬撃が着弾と同時に奴の悲鳴が聞こえたかと思うとそれから先は聞こえてこなくなった。
「クロ……お前は本当にこんなことがしたいのか?」
「ええ」
「それは本当にお前の意志なのか?」
「……ええ」
「本当にお前は……俺のことを殺したいと思ってるのか?」
「そうだって言ってるでしょ!」
声を荒げて否定するクロだが、彼女の目元には涙が浮かんでいて表情も悲しげだ。
こんな顔を俺は昔見たことがある。よく知っている。自分が必要とされていないと分かっていたも、必要とされたくて頑張ってる。そういう人間が浮かべる顔だ。
「あんただって聞いたでしょ! 私は……私はあんたを倒すためだけに作られた生命なの。それだけに今まで生きてきたのよ!」
「だとしても、それはお前の意志じゃないだろ」
「うるさい! 分かったようなこと言わないで。あんたに私の何が分かるっていうのよ? 悲しい想いをしてきたのかもしれないけど、あんたにはいつもあんたを必要としてくれる人が居たじゃない。私にはそんな人いないの……誰からも必要とされてないのよ!」
確かに俺にはお前のことは分からない。
お前が生み出されたからこれまでどんな風に生きてきたのか。どんな毎日を送ってきたのか……想像なんて出来やしない。だけど……
「お前の言うように俺にはお前のことは分からない」
「だったら……!」
「だけど、俺と一緒に居た時のお前が浮かべた笑顔が偽物じゃなかったのは分かる。お前は本来ああいう風に笑う奴だってことは過ごした時間が短い俺でも分かる」
「…………」
「それに……誰からも必要とされてない? ふざけるな。あの男がどうだか知らないが、俺はお前のことをひとりの人間だと思ってる。可愛い妹だって思ってる。俺はお前をこれからも必要してる」
「っ――うるさい! うるさいうるさいうるさい!」
感情を爆発させるようにクロは叫ぶと、涙を拭って剣の切っ先をこちらに向ける。
「あんたは……私が倒すべき敵。敵なの……あんたを倒さなきゃ私が生まれてきた意味も……生きてきた意味もなくなる。私はあんたを倒す……たとえ殺すことになっても!」
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