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SNOW ROSE
間章W
月影にそよぐ風
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その隙間より一つ、月明かりがレイチェルの上へと零れた。
 その刹那…レイチェルの体より淡い輝きが湧き出してきたのであった。
「これは…!」
 皆その様子を見て目を見開いた。それだけでさえ奇跡と言えようが、そこへ新たな輝きと共に人影が現れたのであった。それは美しい女性であり、誰しもがその姿に見覚えがあった。
「聖エフィーリア…!」
 最初にその名を口にしたのは大司教であった。その名を聞くや、唖然としていた人々は皆、エフィーリアへと平伏そうとしたが、エフィーリアはそれを一喝したのであった。
「私に平伏すなかれ!原初の神に平伏しなさい!」
 そう一喝された人々は、直ぐ様エフィーリアを遣わした原初の神へと祈りを捧げたのであった。
 そうして後、エフィーリアは静かにレイチェルの前に立ち、その場に居た全ての者に対して言葉を紡いだのである。
「人よ、聞きなさい。汝等は何故に絵や彫刻を拝むのだ。その愚かな行為を神は怒り、故に神は選びし一人を乙女として御元に召されることとした。その者の純粋さを汝等のための贄とされた。
 人よ、聞きなさい。汝等は原初の神を敬っているのではなく、自らの手で生み出せし物を敬っている。そのようなものに何の価値があるのか。神は汝等に芸術の業を与えられた。しかし、それは祈る対象を造らせるためでなく、汝等の精神・心を育むため、癒すため、喜ばせるために与え給うたものである。
 人よ、聞きなさい。この先、最期の預言者現れん。その者、唯一なる言葉を告げん。その言葉を切に守りなさい。それは汝等に神が与えし最期の言葉なり。
 心せよ!目覚めて祈れ!汝等の浅はかな考えなど、原初の神に遠く及ばぬことを知れ!この嘆きを刻み込め!それ創られし者等全ての代償なり!」
 それは雷のような声であった。
 その後、エフィーリアの背後には様々な聖人達の姿が見えたと言われる。その中には音楽と親愛を守護するレヴィン兄弟や聖なる乙女として伝えられるシュカ、国や民を知識と力で守護するとされるマルスや癒しと献身を司るグロリアなどの姿があったと伝えられている。
 皆はあまりのことに恐れおののき、それを直視出来た者は居なかった。しかし、ただ一人それを見据えていた者がいた。
 それはクラレスである。彼は聖人達と聖エフィーリアを恐怖に打ち勝って見据え、レイチェルがその中へと歩み行く様を見届けていたのであった。
「逝くのか…レイチェル…。」
 それは、もはや恐怖とは違っていた。聖人達は皆レイチェルを労るような目をしており、ある聖人はレイチェルに新しき衣さえ纏わせていたのである。
「クラレス伯父様。今までのこと感謝します。私は原初の神の御前に進み出で、総べての人々が平安に暮らせるよう祈ります。伯父様…父様や母様、兄様に伝えて下さい。ずっと愛しておりますと…。そして、こ
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