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SNOW ROSE
間章W
月影にそよぐ風
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場を去ったのであった。
 クラレスはそのまま調薬へと戻り、待っているであろうレイチェルを思い、一つ一つ薬を合わせていったのであった。
 しかし、彼らの想いは天へ届くことはなかった。この日より七日後、レイチェルの容体は急変したのである。

 その日、朝からレイチェルの体調は悪かった。目はぼんやりと霞み、体は何かを負っているように重く感じていたのである。
「レイチェル。今日はお薬を飲んだら何もせず、直ぐにお休みなさい。」
 居間の安楽椅子に座っていたレイチェルに、モニカが言った。
「分かった…わ…。」
 レイチェルはそう答えた。だがその時、彼女はこの母の声さえ不快に響いた。それは酷い頭痛のせいであり、あらゆる音がそれをより酷くしていたのである。
 レイチェルはこれはいけないと、直ぐに部屋へと戻るべく椅子を立とうとした刹那、堪えきれずにそのまま床へと倒れ込んでしまったのであった。
「レイチェル!」
 様子を見ながら食事の支度をしていたモニカが叫んで駆け寄り、倒れたレイチェルを抱え起こした。レイチェルの体は驚く程熱く、そのせいで服は汗でべっとりと湿っていたのであった。
 モニカの叫び声に、外で仕事をしていたアンソニーとペーターが直ぐ様駆け付けてきた。
 駆け付けた二人の前には倒れたレイチェルを抱くモニカが見てとれ、ことは急を要することが理解できた。
「ペーター、直ぐに医者を連れてくるんだ!」
 父の言うが早いか、ペーターは直ぐに家を飛び出したのであった。
 その後、アンソニーはレイチェルを寝室へ運び、モニカは湿った服を脱がせて布でレイチェルの体を拭くと、乾いたばかりの服を着せて寝かせた。
 しかし、その間もレイチェルは目を開くことはなく、苦し気な息づかいをしているだけであり、二人はどうしてよいのか途方にくれていたのである。
 暫くすると、ペーターが町医者のミューテルを連れて戻ってきた。一般に未だ町医者の少なかった時代、不本意とは言え、診察を受けて薬を処方してもらうまでにかなりの金額が掛かった。そのため大半の人々は、無償で診察を受けられて薬を貰える大聖堂まで行っていたのである。
 だが、レイチェルの体調が悪化したことにより、そうも言ってられなくなったのであった。
「これは…!」
 レイチェルの寝室に入るなり、ミューテルは直ぐ様換気をして湯を沸かすことを命じた。そこは病人を寝かすには、あまりにも条件が悪かったからである。
 このミューテルという町医者であるが、彼は王都にある私塾を経済基盤とし、医療をほぼ無償で行っていた。このミューテルが来てくれたことは、レイチェルにとっても幸運と言えたであろう。
「先生…レイチェルは…?」
 診察を終えたミューテルに、皆は直ちに問い掛けた。問われたミューテルは眉間に皺を寄せ、暫し考えてから
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