第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Bパート】
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たりを……詳しく教えてくれないか?ティナ」
我ながら、ずいぶんと無粋な質問だと思う。祖先に対するある種の『墓あらし』ではないかと。
しかし、過去の怨念たちが今の内乱を招いているとなれば、もはや気遣う余裕などない。
「開戦前、黒竜の化身がライトメリッツのテナルディエに取引を持ち掛けました」
「取引だって?」
「テナルディエの傍らにいた『妻』……その人を黒竜の『妻』として差し出すなら、救ってやると」
初代テナルディエの妻は、万人の心を灯らせるような美しい女性だった。
彼女が抱く豊かな夢は、それほど人々に飢えをもたらさなかった。
彼女の励ましが、彼女の意志が、彼女の願いが、何度も絶望しかけたライトメリッツの民に暖かい『夢』を与え続けていた。
その素質は、『理想世界を先導する超越者』そのもの。
皆にとって、それは象徴であり、希望であり、すべてであった。
そのような国に「その女を妻として俺に差し出せ」と言えば、当然『総意』として怒り狂うだろう。
「だが……結果はライトメリッツの敗北に終わった」
話りの成り行きから既にわかりきっている結果を、凱はつぶやいた。
「ただ攻めて滅ぼしただけなら、禍根は今の時代まで残らなかったかもしれません」
「それは一体……」
「ライトメリッツ…………いや、テナルディエ家と黒竜の因縁はここから始まったといってもいいでしょう」
彼女は語った。たった一人になるまで抗い続けたテナルディエの『末路』を。ライトメリッツはよく戦っていたが、いかんせん戦力が違いすぎる。敗北するのは目に見えていた。
当時に掲げていた正義の熱も、現実を見せつけられ、徐々に冷めていった。
その中で、初代テナルディエは告げた。『降伏するのも自害するのも、お前たちの好きにせよ』と――
無論、降伏を進めたのは民だけではない。その妻にもだ。
いや、これは勧めたのではない。『服従』させたのだ。
『血統』ではなく、『総意』で指導者を選ぶライトメリッツの民は、最後まで王に従うだろう。
だから、命令したのだ。降伏か死か二つに一つだと。
こうして、ひとりぼっちの『王』となったテナルディエは、黒竜の化身は『勇者』として一騎打ちに挑んだのだ。
結果は――――黒竜の化身の圧勝だった。
黒竜の化身は、侵略戦争の過程で失った銀閃の主の代わりにアリファールを振るっていた。
陣頭で銀閃を振るうさまを見て、彼を『勇者』にして『王』――すなわち『勇者王』と呼ぶものさえいた。行いこそ『大魔王』だとしても
その黒竜の化身は、すぐさまテナルディエの生命を奪わずにして公開処刑を決行した。
――それは、竜具アリファールに『選ばれた』テナルディエの妻の手によって、彼を断罪するものだった――
『炎の甲冑』という方法を加えて、特に―
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