第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Bパート】
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――――そして現代へ回帰する。
ヴィクトールとの対面。
当初、フィグネリア――フィーネは年老いた人物の顔を見るや、憎まれ口の一つでも叩いてやろうかと思っていたが、ジスタート王を前にして、その気勢はそがれてしまっていた。
物静かな、知性的な面持ちで、体力や武力は人並以下かもしれない。
少なくとも、凱やシーグフリード、その女ヴァレンティナはおろか、自分にさえ及ばないだろう。
短剣一振りで、ジジイの腰を抜かせる自信はある。瞬きより早く倒せる自信も。
だが、できない。
目に見えぬ、『王』として賄われた威圧感が、見るものを圧倒していたからだ。
(これが……一騎当千の戦姫サマの『唯一』上にたつ王としての貫禄ってやつかい?)
怪訝な瞳で、フィーネは王の姿を見据える。脇から凱がやんわりとあいさつをする。
「初めまして。貴方が……ヴィクトール=アルトゥール=ヴォルク=エステス=ツァー=ジスタートですね」
「ガイ?あんた知っていたの?」
少し拍子抜けしたような声を上げるフィーネ。
「我が国の戦姫……虚影の幻姫から君のことは知らされていた……もっと早く会いたかったのだが、ブリューヌ内乱の進捗や、『もう一つ』の案件で忙殺され、そうもいかなくてな」
虚影の幻姫とは、ヴァレンティナ=グリンカ=エステスのことである。
独立交易都市〜オステローデ〜そして、バーバ=ヤガーの神殿で、この二人は再会を果たした。おそらく、この『会合』も彼女の差し金なのだろうか?
「アリファールを介して俺を呼んだのは、もう一つの案件についてですか?」
勧められながらも、凱は腰を下ろすことなく、問いかける。
余計な気遣いは結構、用件のみを伝えてほしいという意志の表明なのだとヴィクトールも察したのか、僅かに目を瞑ると、言葉を探すように思案する。
「察しがいいな……ならば、単刀直入に話をさせてもらう」
凱のヴィクトールへの第一印象は、無駄を嫌う、寡黙で実直な気質。その印象は、かつてリムアリーシャがエレンから聞いたものだった。
戦姫の主たるジスタート王の性質は当たらずも遠からず。ブリューヌ内乱の突発的な介入にもかかわらず、返事を寄こさないブリューヌへ戦姫のソフィーヤ=オベルタスを使者として遣わしたくらいだ。
そのような王たる男が口にするのを躊躇するような……案件。
それだけで、事態の重要さが伝わる。
「フェリックス=アーロン=テナルディエが暗躍している」
凱の瞳がかすかにすぼまる。
「テナルディエって……ヴォルン伯爵とかいう貴族と対立しているっていう……『銀の逆星軍・シルヴリーティオ』の総大将?」
尋ねるフィーネに、
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