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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Bパート】
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答えた。

――なら、どうして、お前が、私がそれをしなくていいのか、分かるか?――

偉いから。僕は父さんの息子だから。そう答えたんだっけ?だってホントのことだもん。
怒られるかと思った。叱られるかと思った。でも、父さんはちゃんと理由を教えてくれた。

――いいか、私たちはいざというときの為にいる――

いざ……というとき?

――そうだ。彼らが解決できないことが起きた時、解決できるように努めるのが我々の仕事だ。――

でも、そんなことは……あんまりないんじゃ?

――ひとが多く集まれば、それだけ揉め事が増える。責任も大きくなる。このアルサスは小さいこともあって平和だが――

暖かい父の手が、ポンと僕の頭に置かれる。

――ノブレス・オブリージュ――

ノブ……レス……オグ……ジュ?

――先ほど、私の問いに対して、『偉いから』と答えただろう。それは間違ってはいない。だが、偉いから、偉くある為には相応の責任が伴うのだ――

???よくわかんないや。

――今のお前にはまだ難しいかもしれんが……忘れるな。ティグルヴルムド。主とは、領主とはそのためにいる――

朧けに映って消えた記憶。母ディアーナが息を引き取った1年後、ティグルがまだ10歳の頃だった。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





――どうしました?父上、大分お疲れの様子ですが……――

山へ狩りに行ったとき、俺は地竜と遭遇し,倒したという出来事を父に話した。
あまりの鱗の強度と巨大さ故、証拠を持ち帰るに事が出来なかった。だが、父は戯言に過ぎないと思われる俺の言葉を、あっさりと信じてくれた。
幾重にも罠を張り、地形を利用して、牙を、爪を封じて。
地竜の鱗は固い。この地上の物質とは思えない程固く、矢を全く通さない程に。だが、――鱗の隙間――を狙えば心臓を貫けるはずだ。
その読みは矢と共に的中し、60チェート〜70チェート(6〜7メートル)もある地竜を倒したのだ。

――……ティグル。その年で地竜を倒したとは大したものだ。だが、それだけに……弓を侮蔑するブリューヌがお前を受け入れるには、まだ幼いのかもしれん――

――父上?――

――ブリューヌと時代はお前の力を危険と感じるだろう。先祖から頂いたお前の名前は、ブリューヌ語で『革命』を意味するのだ――

――父上!――

不安の兆しが現実味を帯びてきた時、ティグルは理解するしかなかった。
少年はやがて「僕」から「俺」に変わった。
くすんだ赤い若者が大人へ近づく、13歳の頃の記憶だった。






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






――すまない。ティグルヴルムド。お前……と弓を外の世界……へ
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