第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Bパート】
[5/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
答えた。
――なら、どうして、お前が、私がそれをしなくていいのか、分かるか?――
偉いから。僕は父さんの息子だから。そう答えたんだっけ?だってホントのことだもん。
怒られるかと思った。叱られるかと思った。でも、父さんはちゃんと理由を教えてくれた。
――いいか、私たちはいざというときの為にいる――
いざ……というとき?
――そうだ。彼らが解決できないことが起きた時、解決できるように努めるのが我々の仕事だ。――
でも、そんなことは……あんまりないんじゃ?
――ひとが多く集まれば、それだけ揉め事が増える。責任も大きくなる。このアルサスは小さいこともあって平和だが――
暖かい父の手が、ポンと僕の頭に置かれる。
――ノブレス・オブリージュ――
ノブ……レス……オグ……ジュ?
――先ほど、私の問いに対して、『偉いから』と答えただろう。それは間違ってはいない。だが、偉いから、偉くある為には相応の責任が伴うのだ――
???よくわかんないや。
――今のお前にはまだ難しいかもしれんが……忘れるな。ティグルヴルムド。主とは、領主とはそのためにいる――
朧けに映って消えた記憶。母ディアーナが息を引き取った1年後、ティグルがまだ10歳の頃だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――どうしました?父上、大分お疲れの様子ですが……――
山へ狩りに行ったとき、俺は地竜と遭遇し,倒したという出来事を父に話した。
あまりの鱗の強度と巨大さ故、証拠を持ち帰るに事が出来なかった。だが、父は戯言に過ぎないと思われる俺の言葉を、あっさりと信じてくれた。
幾重にも罠を張り、地形を利用して、牙を、爪を封じて。
地竜の鱗は固い。この地上の物質とは思えない程固く、矢を全く通さない程に。だが、――鱗の隙間――を狙えば心臓を貫けるはずだ。
その読みは矢と共に的中し、60チェート〜70チェート(6〜7メートル)もある地竜を倒したのだ。
――……ティグル。その年で地竜を倒したとは大したものだ。だが、それだけに……弓を侮蔑するブリューヌがお前を受け入れるには、まだ幼いのかもしれん――
――父上?――
――ブリューヌと時代はお前の力を危険と感じるだろう。先祖から頂いたお前の名前は、ブリューヌ語で『革命』を意味するのだ――
――父上!――
不安の兆しが現実味を帯びてきた時、ティグルは理解するしかなかった。
少年はやがて「僕」から「俺」に変わった。
くすんだ赤い若者が大人へ近づく、13歳の頃の記憶だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――すまない。ティグルヴルムド。お前……と弓を外の世界……へ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ