第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Bパート】
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―念には念を入れてではない。
影も形も無かったように、初めからテナルディエという男がこの世にいた事実そのものを、抹消しようとしたのだ。
全ては『王』に跪き、『王』を守り、王の為に戦うことだと忘れさせぬために。
そして、元テナルディエの妻だった人に向けて厳かに告げる王の言葉は――
「お前はたった今より、『戦姫―ヴァナディース』だ」
この瞬間、最後の栄養素たるライトメリッツを征服したことでジスタート王国は確立されたのだ。
ただ一つ、永遠に消えない『焔』のような禍根を残したままで――
黒竜の化身の影は、人ではなく竜のそれに見えた。
――俺を『王』として、『勇者』として、『魔王』として従うなら、永遠の理想世界を約束しよう――
――俺は黒竜の化身にして……『理想世界を先導する超越者―アンリミテッド』だ――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヴァレンティナ=グリンカ=エステスは語りきった。ライトメリッツの……ジスタートの真相を。
そして凱の脳裏に繰り返される、黒竜のあの言葉――
――俺は黒竜の化身だ。俺を『王』として従うなら勝たせよう――
「王――」
その言葉をつぶやいたとき、凱の全身に戦慄が走った。
他の『自然力学』に追随を許さない竜の最高位の存在。
すなわち、自然界の『王』として。
『銀閃』――
『凍漣』――
『光華』――
『煌炎』――
『雷禍』――
『虚影』――
『羅轟』――
それらの『力学』を『魔』の『力』で従える『魔王』なのか。それとも――
黒竜の化身とは――
自然原理を体現するために行動する黒竜の『眷族』もしくは『使者』なのか――
あまりの壮絶な話の内容に、フィーネは言葉を失いそうになった。
だが、それでもテナルディエは生きていたのだ。愛する女性を失いながらも、ただ『血』を残すために、女性とつながり続けて今に至る。
『イデンシ』とやらに、復讐の血を残して――
「ヴィクトール陛下……彼の……テナルディエの目的とは?」
凱の問いにヴィクトールは重々しく答える。
「テナルディエ家の代々の目的は、ブリューヌとジスタートの王政府転覆――二つの国を二つに分かつ復讐戦争を起こすことだ」
ブリューヌとジスタートが20年ぶりに事を構えた『ディナントの戦い』は、いわば外交上の延長だった。
だが、それは両国の端で起こった戦争。しかも、お互い『治水』について責任を押し付け合ってきたが、国の転覆まで臨んだわけではない。
もし、ヴィクトールの言葉が現実のものとなれば、数百年の年月を得てようやく癒えた――いや、カサブタが張り始めた国々は、かつてのジスタート建国のよ
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