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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十六話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その6)
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宇宙暦 795年 5月 7日 19:00 宇宙艦隊総旗艦 ヘクトル エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
結局来るところは此処か。司令部参謀が戦闘中にサロンで時間つぶし……、何やってんだか。許されることじゃないよな、シトレもワイドボーンも何も言わなかった。頭冷やしてこい、そんなところだろう。まあ、幸い戦争は勝っている。無理に俺が居る必要もないだろう。
別に好きで七百万人殺そうとしているわけじゃない。殺す必要が有るから殺すんだ。まあ最終的な目標が和平だというのはヤンは知らないからな、あんな事を言ったんだろう。人を殺すことで和平を求めるか……外道の極み、いやもっとも原始的な解決法と言うべきかな。ヤンじゃなくても顔を顰めるだろう。
分かってはいるんだ、ヤンがああいう奴だってのは……。ヤンは戦争が嫌いなんじゃない、戦争によって人が死ぬのが嫌いなんだ。だからあんな事を言い出した。でもな、帝国と同盟じゃ動員兵力だって圧倒的に帝国の方が有利なんだ。そんな状況で敵兵を殺す機会を見逃す……。有り得んだろう、後で苦労するのは同盟だ、そのあたりをまるで考えていない。
結局他人事だ。つくづく参謀には向いていないよな。誰よりも能力が有るのにその能力を誰かのために積極的に使おうとしない。俺が居るのも良くないのかもしれない。ヤンにしてみれば自分がやらなくても俺がやってくれると思っているんだろう。
参謀はスタッフだ、スタッフは何人もいる。全てを自分がやる必要は無い。つまり非常勤参謀の誕生だ。ヤンは指揮官にしてトップに据えないと使い道が無い。お前の判断ミスで人が死んだ、そういう立場にならないと本気を出さない。良い悪いじゃない、そういう人間なんだ。どうにもならない。
あんな事は言いたくなかったんだけどな、俺の気持ちも知らないでと思ったらつい言ってしまった、落ち込むよ……。“亡命者に行き場は無い、利用できるだけ利用すれば良い、その間は高みの見物ですか、良い御身分だ”
そんな人間じゃない、ヤンはそんな卑しい心は持っていない、卑しいのはそんな事を言う俺の心だ。後で謝るか……、謝るべきだろうな、俺はヤンを汚い言葉で不当に貶めたんだ。ワイドボーンが止めてくれなかったら一体何を言っていたか……。
「こちらだったんですか、准将」
サアヤが目の前にいた、どうやら俺の事を心配してきたらしい。余計な御世話だと言いたいところだが現実がこれではな……。馬鹿な子供の世話は疲れるよな、サアヤ。
「酷い事をヤン准将に言ってしまいましたよ」
「……そうですね、あとで謝った方が良いと思います」
「そうします」
俺の答えにサアヤはクスッと笑いを漏らした。
「そろそろ爆発するんじゃないかと思っていました。ずっと無理をしていましたから」
「……」
「何でも
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