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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十六話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その6)
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征軍は前後から挟撃されているのだ」
私の言葉にスクリーンに映る青年は沈痛な表情を見せた。そして一瞬躊躇いを見せた後、問いかけてきた。
『……駐留艦隊を戻すことは出来ませんか』
思わず溜息とともに首を横に振った。
「……遠征軍からは駐留艦隊に撤退するようにと連絡が有ったそうだ。だが現実問題として駐留艦隊も二倍の兵力を持つ反乱軍を相手にしている。簡単には撤退は出来ない、いや向こうが撤退させようとはしない。それにゼークト提督自身、撤退を良しとするには抵抗が有るのだろう」
私の言葉にミューゼル中将が溜息を漏らすのが見えた。
「連中の考えははっきりしている。帝国軍を撃破ではない、殲滅しようとしているのだ、本当は撤退するべきだと思うのだがな」
当初、罠ではないかと思われた反乱軍の撤退は罠ではなかった。帝国軍遠征軍は確かにイゼルローン回廊を要塞に向けて帰還中だった。反乱軍は艦隊を二分し遠征軍と駐留艦隊に対応した。勝機だった、遠征軍、駐留艦隊、どちらかが反乱軍を突破すれば七万隻の反乱軍を撃破出来る、皆がそう思っただろう。
だがやはり罠だった。反乱軍はさらにイゼルローン回廊の外から二個艦隊、三万隻の大軍を用意していたのだ。遠征軍、駐留艦隊、合計六万五千隻の帝国軍は極めて危険な状況に有る。
今、反乱軍は通信妨害を行っていない。イゼルローン要塞には遠征軍、駐留艦隊の悲鳴のような戦況報告が入ってくる。その所為で司令室にいる人間は皆蒼白になっている。駐留艦隊と不仲とはいえ、誰も彼らが殲滅されることなど望んではいない。そして艦隊が殲滅されれば次の攻撃対象は要塞だ。
「遠征軍はメルカッツ提督が後背を守っているようだ。今は未だ耐えているがメルカッツ提督が崩れれば遠征軍は一気に崩れるだろう」
どうにもならない、メルカッツ提督は二倍の反乱軍を相手にしているのだ。遠征軍の後背を守ると言えば聞こえは良いが現実には楯になれということだ。
遠征軍の後背を反乱軍に曝す事は出来ない。戦術行動は著しく制限されるだろう。ただ守り続ける、撃ち減らされる自軍を叱咤しつつ少しでも崩壊を先延ばしする。辛く惨めな戦いだ。おそらくメルカッツ提督にとっては最後の戦いだろうがそれがこんな戦いになってしまった。
だがそれでも耐えてもらわなければならない。遠征軍には一分一秒でも長く敵を引き留めてもらわなければならない。それが遠征軍にとってはどれほど辛く惨めな事であろうとも、このイゼルローン要塞を守るには遠征軍の犠牲が必要なのだ。
「ミューゼル中将、卿がイゼルローン要塞に到着するのは十四日で間違いないかな」
間違いだと言ってくれ、もっと早く着くと……。分かっている、そんな事は有り得ない、それでも何処かで奇跡を願っている……。
『間違いありません。残念ですが
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