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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第三十話 願い
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て、そのために戦って、そのために、
『フェイト……運命か。 綺麗な名前だな』。
私を綺麗と言ってくれた彼を、裏切ったのだから。
「アルフ、ごめんね」
私はアルフの頭を撫でながら、微笑をこぼす。
きっと私は卑怯な女だ。
こうして撫でて、優しくしてあげれば、アルフは許してくれるのを知ってるから。
その証拠に、頭を撫でてからアルフの体の震えが収まっている。
落ち着いてきたんだ。
分かっててそうしてるんだからタチが悪い。
だから微笑になってしまう。
自分に対して呆れた笑み。
「管理局を相手にするのはイヤだけど、母さんに怒られる方がもっとイヤだから」
「知ってる。 でも、なんであの人はフェイトにこんな無茶ばっかさせるのさ?」
「なんでだろね。 母さんは研究のためって言ってたけど、なんの研究をしてるのかわからないし」
アルフの問いの答えを、私は持ち合わせていなかった。
何も聞かされてないから。
研究に必要なものだから。
それだけを理由に、私は頑張ってきた。
いつからか見なくなった、母さんの笑顔を取り戻すために。
――――いつから?
いつから母さんは、笑わなくなったんだっけ?
最後に笑ったのは確か――――っ。
「フェイト、どうかした?」
「……ううん、なんでもない」
気づくと、アルフの不安げな表情が目の前にあった。
私は頭の奥に走った痛みを振り払い、笑顔を作った。
「危険なのは分かってる。 だけど、これは私の願いでもあるから……ね」
「……分かった。 だけど、今はちゃんと休むんだよ?」
「うん、わかってる」
そう答えて、私はアルフに担がれてベッドに向かった。
お腹は空いてるけど、眠気の方が強かった。
黒鐘の家にいたときは、私の空腹に気づいた黒鐘がすぐに料理をご馳走してくれた。
誰かの手料理を食べたのは、凄く久しぶりで、なぜだか暖かかった。
あの時間を、今度は母さんとアルフと一緒に過ごしたい。
そう願って、私は眠りについた。
母さんに対して抱いた疑問は、疲れとともに抜けていった――――。
*****
「――――そう、管理局がね」
「あぁ。 見事に乱入して、こっから関わってくるように見えたぜぇ?」
俺ぁプレシアのもとに戻り、さっきまでのことを洗いざらい話した。
ジュエルシードは取り逃したが、代わりに管理局が介入したことを話すと、プレシアは眉間にシワを寄せ、苛立った様子で俺に背を向ける。
「あれは私にとって必要不可欠なもの……。 なんとしてでも手に入れなさい」
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