青頭巾
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より、すらすらと言葉が出てきた。俺はさりげなく奉の前に出ると、肩を緊張させた。奉はここで死人を出せないと云ったが、この男の目的が分からない限り、撃鉄から手を放すわけにはいけない。
「そこに勝手に入ってきたってことは…目的は『そういうこと』でいいんだな」
若い医師はくい、と首を傾げて、腹が立つ程誠実そうな顔で俺の目を覗き込んだ。俺より頭一つ分近く低い視線で、文字通り覗き込んでくる。その表情に、何の悪気もない。
―――気持ち悪い。
「先に、こちらの領域に踏み込んできたのは、そちらの」
ちらり、と奥の奉に視線を移した。
「玉群の御曹司でしょう?」
「違いないねぇ」
奉がにやりと笑い、眼鏡の位置を直した。…煙色の眼鏡で、表情は見えない。
「…騙されるか!あんたが鴫崎の子に何をしようとしたのか俺達は!」
「証拠は?」
ぐっ…と喉を詰まらせるしかない。俺たちはこの件では1から10までほぼ憶測と噂話で動いている。地下室にある献体も、表向きは正当な手続きを経て病院所有になった『献体』だ。
「よしましょう、この話は。お互い、無傷で済む話ではない」
「構わないんだがねぇ、訴えてもらっても。俺も大声で云わせてもらうよ。『病院の地下で偶然見つけた胎児と妊婦のホルマリン漬け30体が安置された部屋に忍び込んですみませんでしたー!!』てねぇ」
―――心底楽しそうだなてめぇ。
「困った人だなぁ」
医師も、くっくっと肩を震わせて笑った。
何故、笑えるんだ。こいつも奉も…。おかしいのか、こいつらは。
「で、あんたは何をしに来たのかねぇ。手土産持って俺達と談笑しに来たわけじゃないだろう?」
口元から笑いを消して、奉は体の前で指を組んだ。
「休戦を、申し込もうと思いまして」
「ほう」
ほう、じゃねぇよ…こいつ今、さらっと自分の犯罪行為を認めやがったぞ!?
「こっちは最初からコトを構える気はないねぇ。ただ、条件を一つだけ」
「何を?」
「聞きたいだけよ、興味本位で」
―――どういう、道理だ?奉は医師を見つめ、ぽつりと呟いた。
「……道理?」
「どの遺体も、とても丁寧に解剖されていた。そして母子は全てへその緒で繋がっていた。資料とするなら、切断した方が都合がよいだろうに。そして無くなった心臓をあんたがどうしたのかは…ある『手段』で知った」
「………それで?」
「正邪は置いといて。…あんたの中には、何か『道理』があるんだろう?変態性欲とは別に。俺はそれが気になって夜も眠れない。ここしばらくずっと睡眠不足でねぇ。それさえ聞けたら、あとのことはどうでもいい。あんたは腕のいい医師だ」
―――なんて取引だ。人の命を何だと思っているんだ。俺に云わせれば奉もこの医者も、どっちも人外だ。
「……美し
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