出会う風と乗り越える壁
出会う風と乗り越える壁F
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しすぎる?」
「そ、要は艦娘の基となった軍艦の記憶まで引き継いじゃうらしいんだよな。よくある例としては、いないはずの姉妹艦や他の艦娘の名前を唐突につぶやいたり、特定のキーワードを極端に嫌ったりとかね」
「あー・・・・・・なんか見たことあるかも」
「そういうのを提督界隈じゃ『艦戻り』って呼んでる。船が持つ記憶が艦娘に戻っていくって意味合いを込めてね」
「じゃあ舞風が魚雷を撃てないっていうのも・・・・・・」
「あぁ、おそらく艦戻りだろうな」
「あれ、ちょっとまって」
ふと、何かを思い出したかのように五十鈴が会話を遮る
「その艦戻り?ってやつ、直せるの?」
五十鈴の疑問に、提督は何も言わず、ただ長く息を吐く。そんな提督の様子を見て、五十鈴は察した。艦戻りは・・・・・・直せないんだと
舞風は一人、じっと海を眺めていた。演習の後、部屋割りを新しくしてもらい、ルームメイトとなった白雪に挨拶に行った。そこでは二言三言会話を交わした程度だったが、白雪にそろそろ遠征部隊が帰ってくるから挨拶をした方がいいと言われ、波止場で遠征部隊の帰りをじっと待っているわけである。
しかし、ここは横須賀と比べ本当に静かだ。こうやって波止場にいて、聞こえてくるのが波の音とカモメの鳴き声だけなんて横須賀ではありえないことだ。そして、あまりにも静かすぎて、ついつい初風に言われたことが頭の中で繰り返される
「艦娘をやめろ・・・・・・か」
艦娘にも様々な事情を抱えた者が存在するが、戦闘に支障が出るタイプなど聞いたことがないし、そんな艦娘を使ってくれる酔狂な提督などいるはずがない。やはり自分は、艦娘をやめるべきなのだろうか?初風の言うとおりに
「あのー・・・・・・」
「ふぇ?」
そんなことを考えていると、不意に横から声をかけられた。唐突だったため思わず妙な声が出てしまった
「あなた、ここの艦娘じゃないですよね?どこからいらしたんですか?」
話しかけてきた艦娘は身長こそ舞風より頭半分ほど小さかったが、言葉遣いに関しては舞風よりもはるかに丁寧でお姉さんらしかった。全身を黒い服で身を包んだ小柄な少女はハッとしたように話を続ける
「申し訳ありません!名前を伺う前にこちらが名乗らないとですよね」
コホンと咳払いをすると、スカートの裾を引っ張り、まるで良家のお嬢様がするかのような仕草で自己紹介を始めた
「私は睦月型十番艦三日月です。この泊地で主に輸送任務を担当させていただいております。以後どうぞよろしくお願いします」
丁寧な挨拶に驚きを隠せない舞風は、とりあえず三日月の仕草を真似て
「えーっと、私は陽炎型の舞風です、以後よろしく・・・・・・です?」
精一杯丁寧にあいさつをしてみるが、そんな様子を見て
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