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SAO−銀ノ月−
鋭二
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してみるものの。わざとらしい慇懃無礼な口調での予想通りの返答に、確かにエイジは止める気はなさそうだと確信する。もはや感情を荒げることもせず、悠那を蘇らせるための機械になったかのようだった。

「……もういいだろ、ショウキ」

「……ああ」

 ……聞くまでもないことだったな、と一歩下がりながら。今更の説得など意味などなく、キリトにうながされて《オーディナル・スケール》の端末を握る。もはやエイジを止めることが出来るのは、死んでしまった悠那だけだろう……その悠那に託された願いを果たすことが出来ないのは心苦しいが、こちらにもエイジと同様に譲れないものがある。

『オーディナル・スケール、起動!』

 地下駐車場に三者三様の起動音が響き渡り、世界が拡張現実によって塗り潰されていく。とはいえボス戦の時のようにドローンの支援はないため、風景は寂れた今までいた地下駐車場のままだったが、俺達の格好は確かに《オーディナル・スケール》の制服に変わっていた。端末が変化した日本刀《銀ノ月》を鞘から抜き放つと、キリトから離れながら油断なくエイジに刀を向ける。

「どうしました? 俺が怖いんですか?」

 キリトも同じようにして、エイジを取り囲むように剣を構えつつ移動する。そんな俺たちの様子を余裕ぶって眺めるエイジは、まるで構える様子はなく。《オーディナル・スケール》をプレイすれば、《SAO》の記憶を失うというのは嫌でも分かっているつもりだが、こちらにはまだその仕掛けが分かっていない。レインは不明、リズは俺がボスにやられそうになるのを見て、アスナはシリカを庇ってHPが0になってと、分かっているだけでも条件はバラバラだ。

「なっ――」

 故に慎重にならざるを得ない。そんな状況を打破するかのように、キリトの側面の壁が粉々に破壊されたかと思えば、そこから現れた白い巨体がキリトの身体を飲み込んでいた。

「キリト!?」

 その『白』の正体は、巨大な骨。骨が幾重にも重なってムカデのような形状をなしていて、死神が持つような二対の鎌が腕と呼ぶべき部分にはあ
り、この地下駐車場にギリギリ入るサイズで蠢いている。その姿は忘れもしない、俺たちが最後に戦った《SAO》の第七十五層ボス《The Sukull Reaper》に間違えようもなく、キリトを助けに行こうとした俺の目の前に剣閃が走る。

「随分と余裕だな!」

「くっ!」

 そんな隙をエイジが見逃すわけもなく。顔面に振るわれたエイジの片手剣を、すんでのところで日本刀《銀ノ月》で防いだものの、反撃する間もなくエイジはバックステップしてこちらから離れて。そのままギリギリ目で追い付けるほどの速度でこちらの周囲をを走り、やはり人間離れした動きを見せつけていく。

「どうした? 来ないのか?」
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