鋭二
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晩春の空は薄い青色で染められていた、などと気取った言い回しをしたくなるほどの絶好の空模様。ゴールデンウィークも残すところしばしという時期に、ARアイドルによる世界初のライブが始まろうとしていた。その熱気は《オーディナル・スケール》の人気もあってかなりのもので、ドームは立ち見席まで満員になるほどだったようだ。
「ちょっとトイレ行ってくる」
とはいえ、俺とキリトはそんな華やかな場所とは正反対の場所に向かうことになりそうで、ライブに集まった他の友人たちにはそんな見え見えの嘘をついてライブ会場を離席する。エイジに指定された場所は《オーグマー》に表示されていて、どうやらエレベーターでしか行けないドームの地下であるようだ。
『パパ……』
「ユイ……どうした?」
すると移動中、キリトの《オーグマー》にデータを連動させているユイが、見慣れた妖精姿で俺たちの前に現れた。その表情には困惑の感情が見てとれていて、目的の場所まで歩きながらユイの話を聞くと。
『エイジという人が、ママたちの記憶を奪った敵だというのは事実で、理解できます。ですが、ショウキさんの話を聞いて、エイジという方が敵だとどうしても思えないんです……』
「ユイ……」
『パパやママ、みんながいなくなってしまって、蘇らせる手段があるのなら……私も、あの人と同じ道を選んでしまうんじゃないかと……』
間違っていることは理解できているけれど、どうしてもエイジへの同情の念が捨てきれない。あの《SAO》で死んだ悠那という少女を、実質的に蘇らせようとしている、という俺の仮説をキリトとともに聞いて、ユイはそう思ってしまったらしい。
「……そう思うのは、間違ってないんじゃないか」
『え?』
ユイは自らの考えを否定して欲しそうな視線を向けていたが、俺の口から放たれた言葉は正反対の言葉だった。たどり着いたエレベーターを呼び出すボタンを押しながら、キリトに視線を向けてみれば、困ったように手を首に置いていて。
「ユイ。俺もショウキも、あいつと同じようなことをしたことがあるんだ」
『パパたちが、ですか?』
信じられない、とばかりの口振りと表情のユイに、俺とキリトもばつの悪い表情になりながら。地下に行くエレベーターを待つついでに、かいつまんでユイにあのアイテムのことを、というよりアイテムにまつわる話をしていく。
「……俺もショウキも、誰を殺そうがそのアイテムを手にいれるつもりだった」
《SAO》唯一の蘇生アイテム、《還魂の聖晶石》。もちろん死んだ人間を蘇らせる機能などあるはずもなく、HPが0になってから数十秒のみが効果時間という代物だったが、そんなことを当時の俺たちに分かる筈もなく。
「その時はまったく聞く耳を持たなかったけ
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