第一話。全てが酷かったので青空を見上げました
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連れて行く、適当な夜の店に入り、人払いし、酒を飲みながら、カスラは友人の手を強く握る。ライが酒を軽く唇に着けてからポツリと言う。
「昔は男性だったんだ」
誰がどう見ても女性のライ、そんなライの秘密である両性具有、カスラも分かるような分からない様な、ライの言葉に嘘はない、こんな所でつまらない嘘を言うような器の小さい奴ではないからだ。
「この都市の近くで目覚めれば、俺は女になったと、でも股間にも男性の性器がついていた、気付いたよ。両性具有者になったのだと」
カスラには分からないライの過去に触れ、カスラは頬を伝う雫を拭う。
こんな辺境の都市に飛ばされ、しかも両性具有者にされ、容姿すらも恐らく弄られ、もう再会する人々にも気付いてもらえず、永遠に故郷に帰ることも出来ず、帰っても居場所はなく、受け入れる家族すらもおらずに、カスラと言う友人を得たその安堵の大きさは、安寧ともいえる様な平和、どんな酷い浪費家のカスラでも受け入れるのは、そんなライを受け入れる男性も、女性もいないからだ。
「俺は男だった。だから名前は捨てない」
ライとカスラをつなげる手を、ライが強く握る。
「それが俺の意地だ。」
カスラも打たれる様な声に、ライの魂に触れた感じがした。
カスラは言う。
「私は不老種だ。年老いん」
これにライが弾かれたような顔でカスラを見る。カスラは続けた。
「祖国で世界初の符を作り、不老種と化し、永遠に年老いない体になって、祖国を捨てた、ただのカスラになったわけだな」
カスラの言葉に、話に、ライは遠い世界を感じるも、カスラとの強い温盛が、ただ生を感じさせた。女性としての生、生命と言うべき強く命と。
「あのソーサラーギルドはそんな変な奴らの巣窟だ。どいつもこいつもろくでもない事をした、どう見てもお尋ね者の賞金首達だ。だが友よ。共に歩くのなら行かぬか」
カスラの迷いの言葉もない単刀直入に申し出ると、ライは強く直ぐに頷いた。
カスラは後悔もなく、笑いがこみ上げる、こんな辺境に来て、初めての友人が親友ともいえる者になった。
「人生は捨てた物ではないな」
カスラの言葉に、思う言葉に、ライは微かに笑って言う。
「その言葉はよいな、世の中捨てた物ではない筈だ。ライ・ハルカだ」
三度目の自己紹介に、カスラは言う。
「友人の名前だ。いや親友の名前だ。忘れる事も無し」
ライが言う。
「カスラ、お前は大切な友人だ。この友情は捨てないぞ」
ライが自らの杯をカスラの前に出し、カスラも自らの杯をライの前に出し交換して飲む。
人払いしても美貌のライは人目を引くも、ライの荒々しい性格は周知の事実であり、その怒りに関する感
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