巻ノ九十三 極意その六
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「そうして天下を観ておられましたな」
「そうされていました」
「しかし太閤様は戦をされた」
幸村はここで家康と秀吉の違いも話した。
「天下を定める政をされるのではなく」
「力を大きく使われる唐入りをされた」
「そこは太閤様とは違う」
「そうなのですな」
「うむ、ましてや中納言殿を切腹させはされぬ」
家康はというのだ。
「尚且つ徳川、ひいては松平の血縁の御仁は多い」
「だから若し何かあってもですな」
「右府殿、中納言殿に」
「それでも安心ですな」
「すぐに将軍位を継げる方がおられるので」
「うむ、既に中納言殿にはご嫡男もおられる」
幸村はこのことも指摘した。
「まだお生まれになってすぐじゃが」
「ですがそれだけで違いますな」
「それも全くですな」
「そうじゃ、違う」
まさにというのだ。
「これが大きい、幕府そして徳川家にとっては」
「それだけいざという時に強いですな」
「豊臣家と比べ磐石という感じですな」
「しかもその磐石をさらに地固めをしておられる」
「さらによいですな」
「その通りじゃ、家は続いてこそじゃしな」
それでこそ価値があるというのだ。
「豊臣家はそれがなかった」
「ですな、お拾様お一人ではです」
「どうにもなりませぬ」
「後見の方もおられませぬし」
「それでは」
「あの様になるのも道理じゃ、豊臣家は天下人から落ちるべくして落ちた」
唐入りの戦をし秀次を殺してはというのだ。
「今も若しお拾様に何かあればどうなる」
「豊臣家は最早あの方お一人ですし」
「それでは、ですな」
「あの方に何かあれば」
「最早」
「それで終わりじゃ」
豊臣家自体がというのだ。
「そうした状況ではああなるのも道理、だからな」
「それで、ですな」
「あの様になっていきますか」
「一大名となる」
「それも道理ですか」
「その通りじゃ、徳川殿の天下はこれまでになく磐石で長いものになるやも知れぬ」
幸村はこうまで言った。
「そこまでの見事さじゃ」
「では我等はどうすれば」
「これからどうしますか」
「天下がこのまま泰平になれば」
「その時は」
「その時は仕方ない、泰平の世に入る」
そうするとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「ここでな」
「この九度山に流されたままで、ですか」
「そうしてですか」
「修行と学問の二つをして」
「そのうえで」
「そうして生きる、拙者はな」
幸村は自分はと言った。
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