巻ノ九十三 極意その四
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「是非な」
「そうして頂けますか」
「敵味方に別れようともじゃ」
「さすれば」
「天下一の強者と言われる戦をしてみよ」
ここでだ。、立花は笑って望月にこうも言った。
「長きに渡って語り継がれるまでのな」
「見事な戦をですか」
「してみよ、よいな」
「それがし達の腕を以て」
「真田殿と共にな」
「わかり申した、では」
「うむ、その時は見せてもらうぞ」
「お言葉に添いまする」
望月も確かな声で応えた、そしてだった。
幸村と共にだ、彼は立花に礼を述べてから別れを告げて陸奥を後にした。九度山に戻ったのもすぐだった。
そして九度山に向かった彼等を見届けてからだ、立花は自身の屋敷に戻ったがその彼にだ。家臣達はこんなことを話した。
「殿に加増の話が出ております」
「二万石にしたいとです」
「幕府が言っていますが」
「何と、二万か」
その石高を聞いてだ、立花はまずは目を瞬かせた。
「拙者にか」
「はい、左様です」
「今の一万と少しでは足りぬだろうとです」
「そうした話が出ていますが」
「ははは、それはまたどうしたことじゃ」
立花はその話を聞いて今度は笑った。
「拙者はかつて治部殿についたぞ」
「しかし殿の武を惜しんでだとか」
「幕府の中でそうした話が出ていまして」
「それでだとか」
「殿に加増をされるとか」
「御主達に禄を増やせるのはよいが」
立花はこのこと自体はよしとした。
「しかしな」
「それでもですか」
「殿ご自身は」
「そこまでの者ではないと思うがのう」
加増を受ける程にはというのだ。
「幕府も奇特なことをする」
「どうもです」
家臣の一人がここでこんなことを言った。
「幕府としましてもこれからを考えて」
「次のか」
「はい、戦があれば」
「拙者が幕府の敵にならぬ様にか」
「そうしたいのかと」
「別にな」
立花はその家臣の言葉を聞いて述べた。
「そのつもりはないが」
「幕府に歯向かうつもりは」
「そうした場所にもおらぬしな」
「だからですか」
「それはない、上様にもじゃ」
家康、彼にもというのだ。
「それは言える」
「左様ですか」
「はっきりとな」
「では」
「うむ、加増は有り難く受けるが」
それでもというのだ。
「幕府の敵になるつもりはない」
「そのお気持ちは変わりませぬか」
「最初からない」
変わるも何もというのだ。
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