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歌集「春雪花」
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 風吹かば

  揺らぐ草木の

    ささめごと

 音のなきやと

   澄ましたりける



 風が吹けば草木が揺れて音を立てる…。

 まるでそれがひそひそと噂話でもしているかのようで…。


 私は彼のことを話しているのではないかと…そっと耳を澄ました…。



 夜もすがら

  想いてやまぬ

   君そなく

 紡げぬ時の

    流る侘しさ



 寝付けないと…一晩中彼のことばかりを考えてしまう…。

 この街にいない彼…最早会うこともないのかも知れない…。

 こうしている時でさえ…私は彼と時を共有することはない…。

 これからの彼の記憶に…私は存在しないのだ…。


 流れゆく今が…なんと侘しいことか…。





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