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大淀パソコンスクール
節目の日
昼1
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ら無駄に床を転げ回るのはやめなさいって……鎧の音がこっちにも聞こえてますよ。

 事務所に戻った大淀さんが俺に見せてくれたもの。それは、この教室のオーナーからの、大淀さん宛のメールだ。

 実は大淀さんは、オーナーに対して、俺がAccessで業務基幹アプリを作成中であることを報告していたそうな。オーナーはその進捗がずっと気になっていたらしく、その後報告が無いことにやきもきしていたそうだ。

 そしてついに今日、大淀さんに対して『ちょっと見せてちょうだい』と催促しはじめたらしい。『そろそろ見せてくれてもいいんじゃない?』という酷くフランクな文言で、オーナーのメールは締められていた。

「勉強しながらなので、進捗は遅くなるということは再三に渡って言ってたんですけどね。しびれを切らしたみたいです」
「なるほど」

 まぁ確かに、大淀さんからお願いされて一ヶ月ほど経過してるし。順調ならそろそろ何か見せられるものを準備しておく必要はあるはずなんだよなぁ……とはいえ、まだ見せられるものではないのは確かだ。

「んー……じゃあ、今晩にでもフォームを一つ作っておきましょうか? 生徒情報閲覧フォームみたいな感じで」

 見てみたいというのなら、一つでもデータを見ることが出来るものがあれば納得するのではないだろうか……そう思った故の提案なのだが……大淀さんは画面の中のオーナーからのメールをじっと見つめ、顎に手を当ててしばらくの間『うーん』と唸る。

「……では無理しない程度に、フォームをひとつ作っておいて下さい。それでオーナーも納得するでしょう」
「わかりました。んじゃ川内の授業の時にでも、ちまちまと作ってみます。出来はあまり期待しないでくださいね」
「構いませんが……逆にすみません。元々『出来るときに作ってくれればいい』という約束だったのに……」
「いえいえ。逆にこちらこそ、遅くなって申し訳ないです」

 困ったように眉をハの字に歪めながら、大淀さんは俺にペコリと頭を下げる。いやいやこちらこそホント、遅くて申し訳ない。……しかし大淀さん。

「ホントすみません。川内さんとの今年最後の授業なのに」

 ……なぜこのタイミングで、そのアホの名前が出てくるのか、理解に苦しむのですが。そしてなぜ、俺に向ける眼差しが急にニヤニヤとしはじめるのですか。

「……その鬱憤は年末年始に晴らす方向でお願いできますか?」
「おれは今、ここに来て初めて大淀さんを張り倒したいと思いました」
「おやおや」

 教室から掃除機の音が消えた。ソラール先輩が教室の掃除をし終わったのかな? やがて教室内に鳴り響くチャリチャリという鎖帷子の音と、『ガチャドチャリ』という、先輩の無駄な前転の音。そんなことやってたらまたほこりが舞うだろうに……


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