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大淀パソコンスクール
節目の日
昼1
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その清掃業者の素性やネーミングなど、気になる点は色々とあるが……俺達は楽が出来る。それで充分だ。

 ちなみに先ほど大淀さんが言っていたとおり、今日の昼の生徒さんは神通さんと岸田のアホの二人だけだ。他のおじいちゃんおばあちゃんたちは、子供や孫が里帰りをしてきている人たちが多く、年末年始ともなると、授業に出ない人たちも多い。

「ところで……貴公、年末年始は……一体どう過ごす?」

 朝の最初の授業の前には、いつも教室前を軽く掃除しているのだが……その最中、掃除機をかけるソラール先輩に、年末年始の予定を無駄に厳かに聞かれた。掃除機のモーター音は大きいのだが、それでも先輩の声は耳に届きやすい。バケツみたいな兜被ってるくせに。

「俺は特に予定ないです。実家に帰るつもりも今のところ無いですし。せいぜいゆく年くる年を見るぐらいですかね。先輩は?」
「俺も初詣以外の予定は特に無いな」

 ほう。初詣とな。ちょっとひっかかるなその話。俺は掃除用アルコールのスプレーを持っている台拭きに吹きかけ、それで教室のパソコンのキーボードとマウスを丹念に拭き掃除しながら、法廷サスペンスの検察官よろしく、被告人ソラール先輩を追い詰めてみることにした。

「先輩」
「ん?」
「神通さんとですか?」
「ンガァアッ!?」

 俺の突然の真相追求に対して、今まで聞いたこと無いような痛々しい声を上げたソラール先輩は、鎧の音をドチャガチャリと響かせ、その場にうつ伏せに倒れ伏した。その後もそもそと立ち上がり、太陽が描かれたアンニュイな盾をこちらに向け、剣を構えて臨戦態勢を取っている。なにやってんすか先輩。なんでこっちをロックオンして、盾で防御しながら、右に左にゆっくり歩いてるんですか。

「いや、だって神通さんと付き合ってるんですよね?」
「カシワギ」
「はい?」
「誰から聞いた」

 一応、『神通さん本人から……』という答えはあるが、なんだか言うのは忍びない。とりあえずしらばっくれておこう。

「いや、お二人を見てればわかりますよ。だって先輩、最近はよく授業の時に、神通さんのことを『俺の太陽』とかいってるじゃないですか」
「そ、そうか……」

 これは本当。最近、ソラール先輩は神通さんのことを端々で『俺の太陽』と言っている。以前は『太陽になりたい』がソラールさんの口癖だったのだが、その辺の変化にも、二人の関係性が表れている。ソラール先輩にとっての太陽とくればそらぁもう……親密な関係としか言えないでしょうよ。

 ほっぽり出されて空運転している掃除機を再び手に取り、ソラール先輩は床掃除を再開するのだが……その、丸いアンニュイな盾を背負った背中が哀愁を誘う。おい太陽、こっちを見るんじゃない。流し目で俺と目を合わせようとするんじゃあないっ。
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