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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十五話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その5) 
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面の兵力を少し後背に回しましょう」
私の言葉にクラーゼンはギョッとしたような表情をした。
「いや、それには及ばない。メルカッツの手腕を信じている」
「了解しました」
頼む、この話はもうこれくらいにしてくれ……。

うんざりだった。顔に感情が出ないようにするのが精一杯だった。腹立たしさを抑えているとオペレータが緊張した声を出した。
「後背に艦隊、反乱軍です!」

艦橋の空気が瞬時に緊迫した。皆の顔が緊張に包まれている。クラーゼンがオドオドした表情でこちらを見ている。いい加減にしろ! 怒りを押し殺してオペレータに問いかけた。

「反乱軍の規模は?」
「二個艦隊、約三万!」
「さ、三万? 馬鹿な……」
顔から血が引くのが分かった。三万? どういう事だ……。周囲の人間達も皆凍り付いている。

「シュ、シュターデン……」
クラーゼンが縋りつくような声を出したが構っていられなかった。どういう事だ? 何故三万隻もの艦隊がここにいる……。

二個艦隊有るのであれば遠征軍を足止めし反乱軍の本隊はイゼルローン要塞の攻略に専念する事が出来たはずだ。わざわざ包囲を崩しこちらに向かってくる必要など無い。おまけに一時的とはいえ帝国軍に挟撃される危険が有るのだ。兵力に余裕があるとはいえ正しい選択とは言えない。

「シュ、シュターデン、話が違うではないか」
黙れ! 私は考え事をしているのだ! 何故だ? 何故足止めしなかった? 何故伏撃をかけなかった? 一週間もすればミューゼルの小僧が来る。此処で勝ってもイゼルローン要塞を攻略できない可能性が出るではないか、それでは本末転倒だろう、艦隊を撃破しても肝心の要塞の攻略に失敗する……。本末転倒? もし本末転倒で無いとしたら? これが最初からの狙いだとしたら……。

「シュ、シュターデン……」
「……正面から数千隻程引き抜き、メルカッツ提督の指揮下に置きます」
押し殺したような声だった、とても自分の出した声とは思えない。その声にクラーゼンが怯んだような表情を見せた。

多分無駄だろう……。オペレータに指示を出しながら思った。してやられた、ヴァレンシュタインの狙いはイゼルローン要塞では無い、我々遠征軍、そしてイゼルローン要塞駐留艦隊の殲滅だ……。

「オペレータ、駐留艦隊に撤退するように伝えてくれ」
「閣下?」
「シュ、シュターデン、何を言うのだ、それでは我々は……」
クラーゼンが蒼白になっている。哀れな男だ、この男は此処で死なねばならない、宇宙艦隊司令長官が戦死……、悲惨な事になった。

「反乱軍の狙いは遠征軍、そして駐留艦隊の殲滅です。今のままではイゼルローン要塞は丸裸になってしまいます。我々は逃げられませんが駐留艦隊は撤退が可能です。撤退させイゼルローン要塞の防衛に当たらせまし
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