第一章
〜Epilogue〜
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ほしい…そんな荒唐無稽な依頼、最初は断る気であったが、その対価に目が眩んで受けたのだ。まさか、それがこんな大事件になるとは微塵も思わなかったが…。
「師匠、あのお金で…」
「そっか…大神官が隠してたやつだな。けどよ、生きてるうちに遣っときゃ良かったんじゃねぇのか?」
聖堂を見上げて言うルーファスに、ヴィルベルト苦笑しつつは言った。
「やはり神官ですし、贅を尽くすことは躊躇われたんじゃないですか?この聖堂を直すより、人々のために使うんだったら良かったと思うんですけどね。」
「ま、何はともあれ、こんだけ立派になりゃ神官達も戻って来んだろ?」
そう言うや、ルーファスは聖堂の中へと歩みを進めた。ヴィルベルトもそんな師の後を追って中へ入ると、内部も清楚ながら美しく、あの壊れた祭壇も一新されていた。
その場には二人の見知った人々が顔を揃えており、女公爵や街長テミングの姿も見てとれた。そしてその近くにはルーファスの父であるシュテンダー侯爵もおり、そこに母であるマリアーナの姿もあった。
「な…何で来てんだ…?」
「師匠、僕に問われても分かりませんよ。」
そう小声で言って二人は柱の陰に移動したが、それをマリアーナが目敏く見付けた。
「アル!」
アルとはルーファスのことである。マリアーナはルーファスのことをこの愛称で呼ぶが、他にこの愛称を使う者はいない。
マリアーナに呼ばれたルーファスは、仕方無しにヴィルベルトを連れて母のところへとやって来た。
「母上…お久しぶりです…。なぜここへ…?」
「クリスティーナに呼ばれたのよ。」
「叔母上に?」
ルーファスとヴィルベルトは首を傾げ、向こうで談笑する女公爵へと視線を向けた。
女公爵はダヴィッドと面識があるようであったが、シュテンダー家がヴァートコルン家と直接関係したことはない。にも関わらず、何故にシュテンダー侯爵とその妻を招いたのか?
ルーファスはそれを考えて辺りを見回すと、周囲には権力者や知識人が多くいた。そこで彼は気付いたのであった。
- そうか…。叔母上…二人のことを…。 -
女公爵はダヴィッドとマルティナが外から攻められぬよう、自身と少しでも関わりのある者の地位を利用しようと集めたのだ。それは二人へのエールであり、ささやかな贈り物と言えた。
無論、その場にはシューテリング伯爵やファルの街の人々、そしてセブスの村の人々まで来ており、その中で婚姻の儀は盛大に執り行われたのであった。
その一角、端の柱の陰に二人の人物がいた。それはファルケルとその母であった。ファルケルは見習い神官の服を着ており、その容貌は見違えていた。そのために最初、ルーファスは全く気付かなかった。
だが、年老いた母を支えるその姿から、元来の気質を取り戻したのだと確信したのであった。
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