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魔術師ルー&ヴィー
第一章
〜Epilogue〜
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アの息子ダヴィッドに執着することを黙認したのである。
 ダヴィッドには三人の弟がいるが、それは再婚したエリザベートの子供であり、イグナシアの子供はダヴィッドただ一人なのである。
「しかし…ダヴィッド殿は何故に家を出られたのです?」
 ウイツはコアイギスに問い掛けた。ウイツはダヴィッドとは親しい訳でなく、さして会話もしていなかったからである。
 すると、コアイギスはそれを察して直ぐに返した。
「マルティナのためだ。元は大商人の娘だったが、家が没落しだけでなく両親さえ亡くなってしまってな。そのマルティナの実家とヴァートコルン家は取引をしておったため、ダヴィッドは彼女と幼少の頃より知り合いだったのだよ。まぁ、女のために家を捨てた…と言うべきか。」
 そこまで言うと、コアイギスはやれやれと言った風に肩を竦めた。
 そんなコアイギスに、ルーファスはニッと笑って言った。
「そんじゃ、放蕩息子のご帰還といくか。」
 ルーファスらはヴァートコルン家へと赴いていた。あれから二週間程後のことで、そこにはダヴィッドだけでなくマルティナの姿もあった。
 ファルの街では商売上際どい服を纏っていたマルティナであるが、今は清楚な服に身を包み、知らぬ人から見ればどこぞの令嬢に見えよう。元は大商人の娘なのだから、これと言って不思議ではないのであるが。
 その隣には、彼女を養女にしたファルの街長、シューテリング伯爵も顔を揃えていた。目の前にはダヴィッドの両親が座っている。
「全く…お前は放蕩し尽くした挙げ句、勝手に婚姻の相手まで連れて来るとは…。」
「父上…申し訳御座いません。ですが、私は全てを捨ててでも彼女と一生を共にしたいのです。ですから…」
「もう良い。なんとも世話の焼ける放蕩息子。お前の母イグナシアも、一本筋の通った女であった。今のお前を見たら…さぞ喜ぶことであろう。」
 父であるフランツは、そう言って息子に笑みを見せた。
「では…父上…」
「許す。王もそれを認めたのだから、今更私が口出しすることではない。口を出せば、亡きイグナシアにどやされる。のぅ、エリザベート。」
 そう隣に座る妻に言うと、彼女は笑いながら夫に返した。
「そうですわね。イグナシアだったらきっと、ダヴィッドを心から応援する筈。これで良いのですわ。」
 エリザベートはフランツが再婚した相手である。ダヴィッドからすれば継母であるが、エリザベートはイグナシアとは幼馴染みであり、ダヴィッドのことも実の子と思っている。
「それでは、あなた。婚姻の儀はいつにされますか?」
「そうだのぅ…支度を整えねばならぬ故、二月程かかるか…。余裕を持って三月後に、大聖堂にて儀を執り行うことにしようではないか。シューテリング伯もそれで宜しいかな?」
「わしは良いが…マルティナ、お前はそれで良いかの?
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