第一章
XXI
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は一斉に目を丸くした。
そもそも、この様に話がややこしくなってしまったのは他でもない…ダヴィッド自身、爵位がマルティナとの婚姻を邪魔すると考えたからである。身分違いも甚だしいと、敢えて爵位を棄てようとしたのである。要は、マルティナと立ち位置を同じにすれば婚姻出来ると考えたのだ。
しかし、ここで問題になっていることは、その爵位譲渡のことについてなのである。
爵位譲渡は国法にその規定があり、本人が罪を犯して剥奪されるか、または死亡した時にしか認められてはいない。
例えば、当主が病で臥せっていたとしても、その周囲には常に後継出来る人物が存在するため執務に支障はないはずであり、仮に本人の意識が混濁していようと、死ぬまで後継が代役を務められる仕組みになっている。これでは余程の事情がない限り、爵位は嫡男にしかいかない。
これは御家騒動を避けるためのものなのだ。貴族間の御家騒動は、下手をしたら国家を揺るがしかねぬ代物なのである。
このシステムは第三代国王の時代に、国を揺るがした御家騒動が実際にあったために出来た国法である。
しかし今回、王はこの法を云々ではなく、マルティナをどうするかを考えていた様であった。
「王よ、では…どうされるつもりか。」
コアイギスが眉間に皺を寄せ、王へと威圧的に問い掛けた。すると、王は些か苦笑しつつ答えた。
「ファルの街長から書簡が届いてな。その中には、街の住人やセブスの村人等の書簡も入っていたのだ。箱に入って届く書簡とは…それでバーネヴィッツ公との謁見を切り上げたのだよ。」
王はそこで一旦言葉を切り、立ち上がって窓辺へと寄って再び口を開いた。
「しかしな…娼婦の娘にこれだけの人望が集まるとは驚きだよ。ダヴィッドの活躍も克明に記されていたが、あやつの一本木にも大いに驚かされた。」
「で、どうしようと?」
再度コアイギスが問うと、その答えに全員が静かに耳を傾けた。
「ファルの街長の養女とであれば問題あるまい。街長もその様に書いて寄越したからな。」
その言葉に、コアイギスらは呆気に取られた。
要はこうである。王はダヴィッドに侯爵位を継がせるためだけに、マルティナ自身の位を上げようと考えていたのである。しかし、王が独断で位を与える訳にはゆかず、街長が養女にする件をさっさと了承することで解決させようとしているのであった。
だが、それでもまだ問題は残る。
「僭越ながら…王よ。ファルの街長の養女となっても、侯爵家と釣り合いが…。」
残る問題をウイツが進言したが、それに対して王は少しばかり驚いた表情を見せて返した。
「何だ…知らんのか?」
「は?」
王の言葉に、ウイツは何のことか分からずに間の抜けた返事をしてしまった。ルーファスやヴィルベルトも首を傾げている。
だがその中で、コアイ
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